開業を考える際、事業を安定させるために欠かせないのが「運転資金」です。
しかし、具体的にどれくらいの資金が必要なのか、どのように確保すればよいのか、不安を感じる方も多いでしょう。
本記事では、開業時の運転資金の目安や計算方法、調達方法について詳しく解説します。
さらに、運転資金を抑えるための工夫も紹介するので、開業資金の計画にぜひ役立ててください。
そもそも運転資金とは?なぜ必要?
運転資金は、開業後の事業運営に必要な資金のことを指します。人件費、仕入れ費用、家賃、光熱費、通信費などが含まれ、売上が安定するまでの期間、事業を継続していくために必要な資金です。
運転資金が不足すると事業継続が難しくなるため、売上予測を立てて必要な資金を算出し、金融機関からの融資や公的支援制度の利用など資金調達方法も検討しておくことが大切です。
開業時の運転資金の目安
一般的には、開業から3~6ヶ月分の運転資金を用意しておくのが理想とされています。
業種によって必要な金額は大きく異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
● 飲食店: 300万~500万円(家賃、人件費、初期の食材仕入れ費など)
● 小売店: 200万~400万円(家賃、人件費、商品の初期仕入れ費など)
● サービス業: 100万~300万円(家賃、人件費、広告宣伝費など)
ただし、これらはあくまで目安です。ご自身の事業計画に合わせて、次の方法で具体的な金額を計算してみましょう。
運転資金の計算方法
運転資金の計算には、実態に即した分かりやすい方法と、会計上の計算方法があります。特に小規模な店舗や現金商売の場合は、まず①の方法で考えるのがおすすめです。
計算方法①|経費支払ベースでの計算
この方法は、毎月発生する経費を基に必要額を算出する、シンプルで分かりやすい計算方法です。
運転資金 =(1ヶ月分の固定費 + 1ヶ月分の変動費) × 3~6ヶ月
固定費: 売上の増減に関わらず毎月一定額かかる費用
例:店舗や事務所の家賃、正社員の人件費、減価償却費、リース料など
変動費: 売上の増減によって変動する費用
例:商品の仕入れ費、原材料費、アルバイトの人件費、水道光熱費、広告宣伝費、販売手数料など
例えば、1ヶ月の経費合計が80万円の場合、運転資金の目安は「80万円 × 3~6ヶ月 = 240万~480万円」となります。
計算方法②|会計上の計算式
企業会計では、以下の計算式で運転資金を算出します。これは、商品やサービスを提供してから入金されるまでのタイムラグ(売掛金)や、仕入れ代金を支払うまでのタイムラグ(買掛)を考慮した計算方法で、企業間の取引(BtoB)が多い業態で特に重要になります。
運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金
売掛金: 商品やサービスを提供済みだが、まだ受け取っていない代金
棚卸資産(在庫): 販売目的で保有している商品や製品、原材料
買掛金: 商品の仕入れや経費で発生した未払いの代金
開業時の運転資金を調達する方法
運転資金を確保するには、いくつかの方法があります。複数の方法を組み合わせるのが一般的です。
● 自己資金
● 融資を受ける
● 補助金・助成金を活用する
● 出資を受ける
● クラウドファンディング
● ビジネスコンテスト
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
自己資金
開業時の運転資金を確保する上で、自己資金は重要な要素です。自己資金が多いほど、融資の審査に通りやすくなり、経営の自由度も高まります。自己資金は貯蓄や資産の売却によって確保するほか、副業や投資による収入を活用する方法もあります。開業後の経営を安定させるためにも、できるだけ多くの自己資金を用意しておくことが望ましいです。
融資を受ける
自己資金だけでは足りない場合、金融機関からの融資を活用するのが一般的です。
金融機関からの融資には、以下のようなものがあります。
● 日本政策金融公庫
● 制度融資
● 民間金融機関の融資
開業時の融資については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『開業時に融資を受けやすいのは?自己資金なしでも借りられる?』
補助金・助成金を活用する
国や地方自治体が提供する補助金や助成金を活用するのも有効な手段です。補助金や助成金は返済不要な資金であり、融資とは異なり負担が少ないのがメリットです。ただし、申請の際には厳格な審査があり、事業計画の内容や実績が求められるため、事前に条件をしっかり確認しておく必要があります。
開業時におすすめの補助金・助成金制度については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『開業時におすすめの補助金・助成金制度11選。申請時の注意点も解説』
出資を受ける
融資とは異なり、返済義務のない「出資」で資金を調達する方法もあります。
返済義務のない「出資」で資金を調達する方法には、以下のようなものがあります。
● 創業者・共同経営者からの出資
● べンチャーキャピタル(VC)からの出資
● エンジェル投資家から出資
● 他企業からの出資
クラウドファンディング
インターネット上のプラットフォームを通じて、不特定多数の人から少額ずつ資金を集めることができます。魅力的な製品・サービスを訴求することで、開業前から顧客を獲得しつつ資金調達ができるというメリットがあります。一方で、目標金額に届かない場合は資金を得られないリスクや、リターン提供までのスケジュール管理などに注意が必要です。
ビジネスコンテスト
業種によっては、ビジネスコンテストに応募することで、優れたビジネスプランを評価してもらい、賞金を獲得できる可能性があります。全国各地でさまざまなビジネスコンテストが開催されているので、チャレンジしてみる価値はあるでしょう。コンテストへの応募にあたっては、革新性や実現可能性の高いビジネスプランを練り上げることが重要です。受賞すれば賞金以外にも、企業との連携や広報効果などさまざまなメリットが期待できます。開業資金獲得の一助となるかもしれません。
開業費用の内訳や資金調達方法については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『開業にかかる費用とは?開業費用の内訳や資金調達方法を紹介』
運転資金を抑える方法は?
開業時の運転資金をできるだけ抑えることは、事業を安定させるために重要です。特に、開業直後は売上が不安定になりやすいため、無駄な支出を削減し、資金繰りに余裕を持たせることが求められます。ここでは、運転資金を抑えるための具体的な方法について解説します。
固定費を下げる
運転資金の中でも特に大きな割合を占めるのが固定費です。家賃や人件費、光熱費などの固定費を削減することで、資金繰りを改善しやすくなります。
物件選びの際には、立地や広さだけでなく、月々の家賃が長期的に経営にどのような影響を与えるかを考えながら選定するとよいでしょう。
中古の設備・備品を購入する
運転資金を抑えるための効果的な方法の一つが「中古の設備・備品を購入する」ことです。開業時にはさまざまな設備や備品を揃える必要がありますが、新品を購入すると費用がかさみ、資金繰りが厳しくなる可能性があります。中古品を活用することで、初期投資を大幅に削減できるだけでなく、運転資金に余裕を持たせることができます。
実際に、中古の設備や備品を購入した事業者は全体の51.3%にのぼり、開業費用の節約において最も多く採用されています。特に、飲食業や小売業など、開業時に多くの設備投資が必要な業種では、厨房機器や什器、オフィス家具などの中古品を活用することで、コストを大幅に削減できます。
参考:「2014年度新規開業実態調査」 ~アンケート結果の概要~
取引先と交渉する
仕入れコストや支払い条件の見直しは、運転資金を削減するうえで大きな効果があります。仕入れ先を見直し、複数の業者と比較することで、コストパフォーマンスの良い取引が可能になります。特に、長期的な取引が見込まれる場合は、値引き交渉を行うことで単価を抑えられるケースもあります。
共同購入を活用することも一つの方法です。同業者や地域のネットワークを活用し、複数の事業者で仕入れを行うことで、単価を下げることができます。特に、飲食店や小売業では、仕入れ単価が事業の利益に直結するため、共同購入のメリットは大きいでしょう。
まとめ
開業時の運転資金は、事業を安定させるために欠かせません。一般的に3~6か月分の資金を準備するのが理想で、融資や出資、補助金・助成金などの方法で調達できます。
運転資金を抑えるには、固定費の削減や中古設備の活用、取引先との交渉がポイントになります。
特に賃料などの物件費用は固定費の中で最も影響が大きいため、開業時に適切な物件を選ぶことが重要です。
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