飲食店の経営に必要なことは?求められる知識、黒字化のポイントを紹介

飲食店の経営は、お客様の満足に直結するやりがいのある仕事ですが、ビジネススキルや経営者としての資質が求められる厳しさもあります。この記事では、飲食店の経営に必要なことやノウハウを幅広く紹介します。

目次

    飲食店の経営は、料理人としての腕前だけでなく、幅広い知識とスキルが求められる仕事です。
    オープン前から入念な準備が必要であり、開業後も品質管理や衛生面、顧客満足度の向上、従業員教育、コスト管理など、経営全般に目を配る必要があります。黒字化のためには、効果的なマーケティングや継続的な業務改善も欠かせません。

    本記事では、飲食店経営の難しさとやりがいを踏まえつつ、経営者に求められる資質や必要な知識について解説します。

    飲食店経営の難しさ

    飲食店経営は決して簡単なものではなく、以下のような飲食店ならではの経営の難しさがあります。

    ●   初期投資額が高額になりがち
    ●   競合が多数存在する
    ●   売上の確保と上限設定が難しい
    ●   人材を確保し育成しなくてはならない

    しかし、難しさだけではなくやりがいや楽しさが感じられる仕事であることは間違いありません。
    現実的に飲食店経営を考えるため、知っておくべき難しさについて詳しく解説します。

    初期投資額が高額になりがち

    飲食店を開業する際には、まとまった初期投資が必要になります。
    この他にも、店舗の賃貸料や敷金・保証金、開業前の人件費や広告宣伝費など、多岐にわたる費用が発生します。飲食店を開業するために必要な初期投資額は、一般的に約1,000万円が必要と試算されています。ただし、業態や店舗の規模によって初期投資額には大きな差が出ます。日本政策金融公庫による「2021年度新規開業実態調査」の結果によると、実際の開業費の平均値は941万円、中央値は580万円となっています。
    融資や助成金を活用したとしても、数百万円の自己資金は確実に必要になるでしょう。

    出典:「2021年度新規開業実態調査」

    飲食店などの店舗開業に必要な資金に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

    →『店舗の開業資金はいくら必要?具体的な内訳や調達方法を徹底解説』

    競合が多数存在する

    飲食業界は参入障壁が低く、新規開業件数は毎年5〜8万件にものぼります。
    つまり、多くの競合店が存在するのです。特に都市部では、同業他社との競争が激しくなっています。
    また、飲食業界は新規参入数が多い反面、廃業率が最も高い業界でもあります。廃業率が高い原因はいくつか考えられますが、競争の激化も含まれるでしょう。
    こうした状況下で飲食店が生き残るためには、他店との差別化を図り、競争優位性を確立することが重要です。お客様のニーズを的確に捉えた独自のコンセプトづくりや、質の高いサービスの提供などを通じて、競合店との差別化を図っていく必要があります。

    参考:タウンページデータベース、 中小企業庁(第3節 開廃業の状況)

    売上の確保と上限設定が難しい

    飲食店の売上は、客数と客単価の掛け合わせで決まります。しかし、この2つの要素は必ずしも比例するわけではありません。
    理想は客数が多く、客単価も高い状態ですが、それを実現するのは簡単ではありません。客数を増やすために価格を下げれば客単価が下がり、客単価を上げようとすると客数が減ってしまうというジレンマがあるからです。
    加えて、飲食店の売上には上限があります。席数と回転率から最大売上が決まってしまうのです。つまり、売上アップを目指して客数を増やしすぎると、店内が混雑し客単価が下がって売上が伸び悩んでしまう可能性があるのです。
    ここのバランスを取ることが、飲食店経営ならではの難しさと言えるでしょう。

    人材を確保し育成しなくてはならない

    飲食店を経営し一定の売り上げを確保するには、従業員を雇わなくてはなりません。
    人材の確保と育成も、飲食店経営の難しさです。
    優秀な人材を確保するには、求人広告や人材紹介サービスを活用し、魅力的な労働条件を整備して応募者を引き付ける努力が求められます。面接時には人物評価を的確に行い、組織への適合性を見極める必要があります。
    雇用したら終わりではなく、効率よく安全に働いてもらうための育成も行わなくてはなりません。長く働いてもらうために労働環境を改善させることも常に意識します。通常の店舗運営と並行して、これらの人材育成を行う難しさがあります。

    飲食店経営のやりがい

    飲食店経営には難しさがありますが、それを乗り越えられるほどのやりがいもあります。

    まず、「食」というものは人間の生理的欲求であり、需要が無くなることはありません。ビジネスとして考えると、これは飲食店ならではの大きなメリットです。
    そして、飲食の仕事ではお客様に満足していただく瞬間に立ち会うことができます。食事を終えたお客様から「美味しかった」「ごちそうさまでした」という声を直接かけてもらえることは、他の業種にはないやりがいです。

    飲食店の経営者に向いている人は?

    飲食店の経営者に向いているのは、以下のような人です。

    飲食店の経営者に向いている人は?の表


    飲食店経営者は、自分の想いを形にし、料理とサービスを通してお客様に感動を与えることができます。

    飲食店の経営者に求められる資質と知識

    飲食店の経営者に求められる資質と知識の写真


    理想的な飲食店経営のためには、お客様への献身的な気持ちだけではなく、経営者としての資質や知識も必要です。

    ●   経営マインドと実践的な学習姿勢
    ●   料理・サービス等の専門知識
    ●   衛生や防災等の関連法規の理解
    ●   マーケティング等の経営知識

    それぞれの内容について、詳しく解説します。

    経営マインドと実践的な学習姿勢

    飲食店の経営には、経営者としての心構えと姿勢が重要です。まず、明確なビジョンを持ち、そのビジョンを従業員と共有することが大切です。そして、常に顧客のニーズを把握し、それに応えようとする柔軟な姿勢が求められます。
    加えて、経営者自身が実践的な学習を継続することが重要です。
    飲食業界は常に変化しています。食の安全に関する最新情報や食品表示等の法令の理解、食に関わる専門知識を常に学び続けなくてはなりません。

    飲食店経営には経営者としての強い覚悟と、実践的かつ継続的な学習姿勢が不可欠です。

    料理・サービス等の専門知識

    飲食店の経営者には、当然ながら料理やサービスに関する専門知識が求められます。
    具体的には、以下のような内容です。

    料理・サービス等の専門知識の表


    これらの専門知識は、飲食店経営において欠かせません。料理の質が高く、優れたサービスを提供することが、リピーターの獲得や売上向上につながるからです。経営者自身が料理やサービスのスキルを磨くとともに、スタッフ教育にも力を入れ、店舗全体のレベルアップを図ることが重要となります。

    衛生や防災等の関連法規の理解

    飲食店経営においては、食品衛生法をはじめとして「食品表示法」「消防法」といった各種法規を遵守する必要があります。
    これらの法律に基づき、従業員への教育を徹底したり、定期的な店内の点検を実施したりといった対応を行わなくてはなりません。
    法令を遵守せずに営業すると、営業停止や罰則等の厳しい処分を受ける可能性があります。関連法規をしっかりと理解し、コンプライアンス意識を持って経営に臨むことが重要です。

    マーケティング等の経営知識

    飲食店経営者に求められる知識として、マーケティングの基礎を理解することが重要です。
    マーケティングでは、自店の強みを生かしつつ、ターゲット顧客層を明確にし、ニーズに合わせた商品・サービス設計を行います。また、「4P」と呼ばれる以下の要素を最適化することが求められます。

    1.   Product...... 提供する商品・サービス
    2.   Price...... 価格設定
    3.   Place...... 立地や販売チャネル
    4.   Promotion...... プロモーション活動

    加えて、顧客データの収集・分析を通じて、顧客満足度の向上や売上拡大につなげていくことも重要です。
    他にも、会計や人事労務などの経営知識も身につける必要があるでしょう。経営者自身が学び続ける姿勢を持ち、必要な知識を吸収していくことが求められます。

    飲食店を開業するまでの準備

    飲食店を開業するまでには、綿密な準備が必要不可欠です。まずは開業資金の計画を立て、物件探しを行います。物件が決まったら、内装工事や厨房機器の導入を進めていきます。同時に、店舗コンセプトに合わせたメニュー開発にも着手しましょう。

    飲食店を開業するまでの準備の表


    また、開業に必要な許認可の取得や、食材仕入れ先の開拓、スタッフの採用と教育なども重要な準備事項です。これらを着実に進めることで、開業後のスムーズな運営につなげることができるでしょう。

    飲食店の開業までの詳細な流れは以下の記事で詳しく解説しています。

    →『飲食店の開業に必要なもの・資格・費用を5つのステップでまとめて解説!』

    飲食店の経営を成功させるには、ベストな物件選びが重要です。

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    飲食店開業後の経営に必要なこと

    飲食店開業後の経営に必要なことの写真


    飲食店を開業したら、経営が本格的に始まります。事業を成功させるために必要なポイントは以下の4つです。

    ●   適切な在庫・勤怠管理
    ●   QSC(Quality、Service、Cleanliess)の意識
    ●   食材仕入れ等のコスト分析と改善
    ●   従業員教育と顧客満足度向上

    一つずつ、詳しく解説します。

    適切な在庫・勤怠管理

    飲食店の経営において、適切な在庫管理と勤怠管理は欠かせません。
    飲食店では、食材の在庫をしっかりと管理しないと、安全面でのリスクが生じてしまいます。適正な在庫量を維持し、適宜仕入れ価格の見直しや在庫ロスの軽減といった改善サイクルを回していきましょう。
    一方、勤怠管理では、従業員のシフト調整や労働時間の適正化が重要です。従業員の適性を考慮したシフト作成や労働に関する法規の遵守、従業員とのオープンなコミュニケーションを心がけましょう。
    在庫管理と勤怠管理を適切に行うことで、飲食店経営の安定化を図ることができます。

    QSC(Quality、Service、Cleanliess)の意識

    飲食店経営において、QSC(品質、サービス、清潔さ)の意識を持つことが非常に重要です。QSCを構成する3つの要素は以下の通りです。

    品質(Quality)

    提供する品の品質です。提供する料理やドリンクの味、見た目、ボリュームなどの品質を一定以上に保つことを指します。

    サービス(Service)

    モノではなく、サービス面の意識です。接客サービスの質を高く保ち、お客様に満足してもらえるよう常に心がけます。

    クリンリネス(Cleanliness)

    提供する品と店内環境の清潔さです。店内外の清掃を徹底し、衛生面の管理を怠らない姿勢が必要です。

    QSCのどれが欠けてもお客様の満足度は下がってしまいます。特に衛生面の不備は、食中毒などの事故につながるリスクもあるため、経営者は従業員教育などを通じてQSCの意識を浸透させていく必要があります。QSCを追求し続けることが、飲食店経営の基本であり、成功の鍵を握っているのです。

    食材仕入れ等のコスト分析と改善

    飲食店経営において、食材の仕入れコストは大きな割合を占めます。仕入れ価格の変動を把握し、適切な価格設定やメニュー開発につなげていくことが重要です。
    食材原価は売上の30〜35%に抑えることが理想的とされています。仕入れ価格の推移を記録し、定期的に分析することで、コストの増減要因を特定できます。

    また、食材ロスの削減も重要なポイントです。需要予測を適切に行い、過剰な仕入れを防ぐとともに、調理工程の効率化や、食材を余すことなく使い切る工夫を行いましょう。
    さらに、仕入れ先の見直しも検討すべきです。条件の良い仕入れ先を複数確保し、品質と価格のバランスを取ることが求められます。

    従業員教育と顧客満足度向上

    従業員教育は、飲食店を経営する上で難しい工程であることは冒頭で説明しました。それでも、なぜ従業員教育を徹底しなくてはいけないのかと言うと、接客の質はお客様の満足度に直結するためです。

    従業員教育は以下の要点を押さえて実施しましょう。

    ●   基本的な接客マナー
    気持ちの良い接客を実現させる第一歩です。

    ●   メニューや食材の知識
    全ての従業員が的確に商品を説明できるようにしましょう。

    ●   衛生管理の徹底
    安全・安心な食事を提供する意識を醸成します。

    ●   クレーム対応
    真摯な態度によって顧客満足度を維持・向上させます。

    これらの教育を通じて、お客様のニーズを的確に捉え、期待以上のサービスを提供することが、顧客満足度の向上につながります。さらに、従業員のモチベーションアップにも効果的です。

    飲食店の経営を黒字化させるための施策

    飲食店の経営が安定したら、さらなる利益を生み出すための施策を実施していきましょう。

    ●   顧客データの収集と分析
    ●   マーケティングと効果的な集客対策
    ●   オペレーションの効率化

    それぞれの施策について、解説します。

    顧客データの収集と分析

    飲食店の経営を黒字化させるためには、お客様の年齢層や属性といったデータの分析が欠かせません。このような顧客データの収集には、アンケートの実施や会員カードの配布、口コミサイトの確認といった方法があります。
    収集したデータから「リピーター客の割合は⚪︎%」「新メニューは女性客の満足度が高い」といった分析を行います。分析結果を活用することで、効果的なマーケティング施策の立案やメニュー改善につなげることができるでしょう。

    マーケティングと効果的な集客対策

    先ほどの分析結果を元に、効果的なマーケティングと集客対策を実施します。まず自店の強みや特徴を分析し、ターゲット顧客層を明確にしましょう。そして、そのターゲット層に響くメッセージを発信することが大切です。
    例えば、SNSを活用したPRや、近隣へのクーポン配布などが挙げられます。その他に、オープン周年イベントの開催や、割引キャンペーンといった話題性のある施策も効果的でしょう。
    的確な分析とそれに基づいた対策を効果的に組み合わせることで、自店の認知度向上と来店客数アップを図ります。また、費用対効果を見極めつつ、実施と検証のサイクルを回して施策を改善していくことが重要です。

    オペレーションの効率化

    オペレーションの効率化は、飲食店の経営を黒字化するために重要な施策の一つです。以下のような取り組みが効果的でしょう。

    オペレーションの効率化の表


    こうした取り組みにより、人件費や光熱費等のコストを削減し、利益率の向上につなげることができます。オペレーションを可視化し、継続的な改善を図りましょう。

    まとめ

    飲食店の経営は簡単ではありませんが、やりがいのある仕事です。料理が好きで献身的な人柄の方は飲食店の経営者に向いているでしょう。それだけではなく、飲食店の経営者にはビジネス面での資質と法令関連の知識、常に学び続ける姿勢も必要です。
    開業までの準備は入念に行い、経営が安定したら、黒字化させるための施策を積極的に実施していきましょう。

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