パン屋さんに憧れて、開業を考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、パン屋を開業するには、資金や資格、そしてさまざまな準備が必要です。何から始めたら良いのか、どんなことに注意すれば良いのか、不安に感じる方もいるでしょう。
そこで本記事では、パン屋を開業するために必要な知識を、未経験の方にもわかりやすく解説します。開業資金の目安や使える助成金・補助金、必要な手続きや資格、そして開業の流れまで、詳しく見ていきましょう。
パン屋開業は未経験でもできる？
パン屋開業は、未経験の方でももちろん可能です。熱意と努力があれば、経験がないからといって諦める必要はありません。実際に、未経験から成功しているオーナーもたくさんいます。パン作りが好きという情熱を持ち、経営の勉強をしっかり行えば、未経験でも十分に成功のチャンスがあるでしょう。
未経験の場合、開業前にパン作りや経営について学ぶことが重要です。製パン学校に通ったり、パン屋で修行したりすることで、必要な技術や知識を習得できます。また、経営に関する書籍を読んだり、セミナーに参加したりすることで、経営の基礎を学ぶのもおすすめです。さらに、成功しているパン屋のオーナーに話を聞くなど、実際に経営している人の経験談を聞くのも良いでしょう。
パン屋開業に必要な資金の平均は？
パン屋を開業するには、初期費用が発生します。パン屋を開業した後、お店を続けていくためには、材料費や人件費、光熱費、家賃など、さまざまな運営費用がかかります。
これらの費用の平均額はいくらくらいなのか見ていきましょう。
初期費用
パン屋を開業する際には、開業資金に加えて初期費用が必要です。初期費用とは、お店をオープンするまでに必要な費用のことを指します。
具体的には、物件の取得費用、内装や外装の工事費用、厨房設備の購入費用などが含まれます。これらの費用は店舗の規模や立地条件によって異なりますが、平均的な目安としては以下の通りです。
上記以外にも、備品購入費用なども初期費用に含まれます。内装工事費も数100万円単位の費用となるケースが多く、全体で数100万～数1,000万円の初期費用を見込んでおく必要があるでしょう。これらの費用は、パン屋の規模や設備、内装のグレードによって大きく変動します。そのため、事前にしっかりと見積もりを取り、資金計画を立てることが重要です。
運営費用
パン屋を開業した後、運営を続けるためには、材料費、人件費、光熱費、家賃などの費用がかかります。これらの費用は、規模や販売するパンの種類、営業時間によって異なるため、本項目では一般的に運営費用はどのくらいに収めるべきかの目安をご紹介します。
光熱費は、オーブンや冷蔵庫、エアコンなどの使用状況によって変動します。特に、パンを焼くために欠かせないオーブンは多くの電力を消費するため、電気代が高額になりがちです。省エネタイプの機器を導入したり、使用時間を工夫したりすることで、光熱費を削減できる場合もあるでしょう。
パン屋開業に使える助成金・補助金は？
開業資金の調達方法は自己資金以外にもあります。開業時の大きな助けとなる助成金・補助金を活用しましょう。本項目では、パン屋開業に使える助成金・補助金をご紹介します。
助成金・補助金は併用できる場合もありますが、同じ費用への重複利用はできません。複数の補助金が利用可能な場合は、最もメリットが大きい ものを選びましょう。
申請には事業計画書の作成などが必要となるため、余裕を持った準備が大切です。
開業時におすすめの補助金・助成金制度については以下の記事でさらに詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『開業時におすすめの補助金・助成金制度11選。申請時の注意点も解説』
創業補助金(東京都)
東京都の創業補助金は、新たに事業を始める方や、事業開始後間もない方（原則として創業から5年以内）を対象とした補助金です。助成限度額は上限400万円（下限100万円）となっており、 事業計画に基づいて設備投資や人件費、広告宣伝費など、幅広い用途に活用できます。
パン屋を開業する際にも、必要な設備の購入や店舗改装費用、広告宣伝費などに活用できるため、資金調達の一助として検討をおすすめします。
参考：創業助成金（東京都中小企業振興公社）｜融資・助成制度
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が生産性向上設備等を導入する際の費用の一部を補助する制度です。 パン屋の開業にも活用できる可能性があり、例えば、最新型のオーブンやミキサー、冷凍冷蔵庫などを導入することで、作業効率の向上や製品の品質向上につなげられます。
補助金の金額は事業計画の内容に応じて変動しますが、設備投資等に使える補助上限額は750万円〜5,000万円、補助率1/2もしくは2/3です。
ものづくり補助金は、公募期間が設定されているため、事前に申請要件やスケジュールを確認しておきましょう。
参考：ものづくり補助金
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務効率化や売上アップを目的としたITツール導入にかかる費用の一部を補助する制度です。パン屋開業時にも、この補助金を活用することで初期費用を抑えることができるでしょう。対象となるITツールは、POSレジシステム、会計ソフト、顧客管理システム、予約システムなど多岐にわたります。これらのツールを導入することで、業務の効率化だけでなく、顧客満足度の向上やデータに基づいた経営判断にも役立つでしょう。
通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠により補助率や補助額は異なりますが、採択されれば、導入費用の1/2から2/3を補助金として受け取ることができます。
ぜひ積極的に活用を検討し、開業資金を有効に活用しましょう。ただし、補助金の要件や申請方法は年度によって変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
参考：IT導入補助金
受動喫煙防止対策助成金
パン屋を開業する際、特にイートインスペースを設ける場合は、受動喫煙対策は必須です。2020年4月1日から健康増進法が改正され、多数の人が利用する施設は原則屋内禁煙となりました。飲食店も例外ではなく、違反すると罰則が科せられます。そこで、受動喫煙対策にかかる費用を補助してくれるのが「受動喫煙防止対策助成金」です。助成金を利用することで、喫煙専用室などの設備投資の負担を軽減できます。
助成金の申請は、原則として工事完了後に行います。必要な書類や手続きは自治体によって異なりますので、事前に確認し、準備を進めておくことが重要です。
イートインスペースを設ける場合は、助成金の活用を検討し、快適な空間を提供しましょう。
参考：受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業（財政的支援）
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響や新しい生活様式への対応、デジタル化の進展といった社会経済情勢の変化に対応するため、中小企業等の事業再構築を支援する補助金です。パン屋を開業する場合でも、既存事業からの転換や新分野展開といった要件を満たせば活用できる可能性があります。
例えば、既存の飲食店を経営していて、新たにパンの製造販売を開始する、あるいはオンライン販売を導入するといった場合に、この補助金を活用できるかもしれません。補助対象となる経費は幅広く、機械装置やシステム構築、広告宣伝費などが含まれます。
成長分野進出枠（通常類型・GX進出類型）とコロナ回復加速化枠があり、中堅企業なら最大で1億円の補助を受けることができます。成長分野進出枠の補助率は中小企業で1/2、中堅企業で1/3です。
事業再構築補助金を活用することで、初期投資の負担を軽減し、よりスムーズにパン屋を開業できる可能性があります。詳細な要件や申請手続きについては、経済産業省のウェブサイトや相談窓口で確認しましょう。
参考：事業再構築補助金
パン屋開業に必要な手続きと資格
パン屋を開業するには、いくつかの手続きと資格が必要です。主なものをご紹介します。
これらの手続きや資格については、基準や必要書類が異なる場合があるため、開業予定地の保健所や消防署に確認することをおすすめします。基事前に確認してスムーズな開業準備を進めましょう。
食品衛生責任者
食品を製造・販売する店舗では、原則として食品衛生責任者を設置する必要があります。この責任者となるためには、所定の講習会を受講し、資格を取得しなければなりません。
栄養士・調理師などの資格を保有している場合は、受講が免除されます。
参考：食品衛生責任者について
飲食店営業許可
飲食店営業許可は、イートインスペースを設けて飲食を提供する場合に必要です。パンの販売のみであれば、この許可は不要です。ただし、店内で調理したサンドイッチなどを提供する場合は、食品営業許可が必要になります。
なお、これらの要件は店舗が所在する地域の条例や保健所の指導によって細かく異なる場合があります。そのため、具体的な計画が固まった段階で、営業する地域の保健所に直接相談し、必要な手続きや許可を確認しましょう。
菓子製造業許可（必要な場合）
菓子製造業許可は、テイクアウト専門でパンの製造と販売を行う場合に必要になります。例えば、店頭でパンを販売し、お客さまが自宅などで食べることを想定している場合は、菓子製造業の許可を取得しなければなりません。
また、パンの製造方法によっても許可の要否が変わることがあります。例えば、冷凍生地を使用してパンを焼き上げるだけの場合は、製造行為とみなされないため、菓子製造業の許可は不要です。しかし、小麦粉からパン生地を製造する工程を含む場合は、菓子製造業の許可が必要になります。
その他（防火管理者など）
パン屋を開業する際には、食品営業許可や食品衛生責任者の資格取得以外にも、規模によっては防火管理者の選任が必要になります。防火管理者とは、火災発生時の避難誘導や初期消火など、防火管理業務を行う責任者のことです。消防法によって定められており、収容人数が30人以上のパン屋では、防火管理者の選任と消防署への届出が義務付けられています。
パン屋の防火管理者になるためには、消防署が実施する防火管理講習を受講し、修了証を取得する必要があります。講習では、火災予防、避難誘導、消火設備の使用方法など、防火管理に必要な知識と技能を学ぶことができます。
防火対策をしっかりと行い、お客さまと従業員の安全を守りましょう。
パン屋開業の流れと必要な準備
パン屋を開業する際には、以下の流れで準備を行うことをおすすめします。
● コンセプト作り
● メニュー開発
● 立地選定
● 物件取得
● 厨房設備・内装工事
● スタッフ採用
● 広告宣伝
● 開店準備
それぞれのステップごとに詳しく見ていきましょう。
コンセプト作り
パン屋を開業する上で、まず一番最初に考えなければならないのが「コンセプト」です。具体的には、以下のようなポイントを明確にしましょう。
● ターゲット層
● 提供するパンの種類
● 価格帯
● お店の雰囲気 など
どのようなコンセプトにするかは、オーナーの個性や、地域特性、市場のニーズなどを考慮して決定しましょう。明確なコンセプトを定めることで、他店との差別化を図り、顧客の心を掴むことにつながります。
メニュー開発
パン屋を開業するにあたって、売れる商品を開発することはお店の成功に直結する重要な要素です。試作を繰り返し、看板商品となるパンを見つけましょう。
例えば、地域密着型のパン屋を目指すのであれば、親しみやすい定番商品を中心としたメニュー構成が考えられます。一方、高級志向のパン屋を目指すのであれば、厳選した素材を使ったこだわりのパンを提供する必要があります。また、他店との差別化を図るため、オリジナリティあふれる商品を開発することも重要です。
顧客ニーズを把握するために、市場調査を実施することも有効です。競合店の商品や価格帯を調査することで、自店の価格設定や商品開発のヒントを得ることができます。これらの要素を考慮しながら、魅力的なメニューを開発しましょう。
立地選定
パン屋の成功には、立地選びが大きく影響します。お客さまの層やお店のコンセプトに合った場所を選びましょう。ターゲット層を明確にし、彼らが普段どこで生活し、どのように移動しているかを想像することが大切です。
例えば、住宅街のスーパーマーケット近くは、主婦層のリピーター獲得につながりやすいでしょう。駅周辺は人通りが多く、幅広い層へのアプローチが期待できますが、競合店や高額な賃料も考慮すべきです。商業施設内は集客力がありますが、自由度が低い場合があるでしょう。また、郊外では駐車場の有無が来店のしやすさに関わるため、見落とせないポイントです。
それぞれの立地条件におけるメリット・デメリットを考慮し、お店のコンセプトに合った最適な立地を選びましょう。
物件取得
物件取得は、パン屋開業において欠かせないステップです。物件の立地や条件によって、開業費用や将来の売上にも大きく影響します。
特に家賃や敷金・礼金などの費用は、開業資金の大部分を占めるため、慎重に検討が必要です。予算に合った物件を選ぶことで、無理のない経営がしやすくなるでしょう。
テナリードは、パン屋開業に最適な物件を多数ご紹介しております。物件探しでお困りの際は、テナリードにご相談ください。
厨房設備・内装工事
物件が決まれば、厨房設備や内装工事を進めます。パン作りの効率性と、お客さまにとって居心地の良い空間づくりを両立させましょう。必要な設備はオーブン、ミキサー、冷蔵庫など多岐にわたりますので、専門業者との相談も有効です。
厨房設備の配置は作業効率に大きく影響します。動線を意識した配置計画を立て、スムーズな作業環境を整えましょう。
スタッフ採用
物件取得と並行して、スタッフの採用活動も開始しましょう。パン作りの技術を持ったスタッフはもちろん、お客さまへの接客を担当するスタッフも重要です。お客さまに最高のパンとサービスを提供するためには、どのような人材が必要なのかを検討しましょう。
採用方法は、求人サイトやハローワークの活用、店頭での告知などが考えられます。採用面接では、志望動機や経験、人柄などを確認し、自店に合う人材かどうかを見極めることが大切です。また、従業員の労働条件や福利厚生についても事前にしっかりと決めておく必要があります。給与や勤務時間、休日、社会保険など、労働基準法に則った適切な条件を提示することで、従業員のモチベーションを維持し、定着率の向上につなげることができるでしょう。
広告宣伝
物件取得やスタッフの採用が整ったら、いよいよ広告宣伝活動です。宣伝は、ターゲット層に合わせた適切な宣伝方法を選ぶ必要があります。近隣住民をターゲットとするなら、チラシ配りやポスティングが有効な手段です。若い世代には、InstagramやFacebookなどのSNSを活用した情報発信が効果的でしょう。お店の公式ホームページを開設し、メニューやお店のこだわりなどを掲載することもおすすめです。
さらに、地域の情報誌やフリーペーパーに広告掲載することで、より広範囲に情報を届けることができます。
広告宣伝は、開店後も継続的に行うことが重要です。季節ごとの新商品やキャンペーン情報を発信することで、顧客の来店意欲を高め、リピーター獲得につなげましょう。
開店準備
メニュー開発やスタッフ採用などが整ったら、次はいよいよ開店に向けた最終調整を行います。オープン日を決めたら、逆算しながら必要な作業を進めていきましょう。
まず、仕入れ先との最終確認を行い、必要な食材や資材を発注します。パンの製造に必要な小麦粉やバターなどの材料はもちろん、包装資材やレジ袋なども忘れずに準備しましょう。
さらに、開店日に向けてスタッフの最終研修も行います。接客マナーやレジ操作、商品の説明など、スムーズなオペレーションができるよう確認しましょう。
開店前には、店内を清掃し、商品を陳列し、魅力的な空間を演出します。開店当日は、お客さまを笑顔で迎え入れ、最高のサービスを提供できるよう、万全の準備を整えましょう。
パン屋開業を成功させるには？失敗しないための秘訣
パン屋開業を成功させるには、綿密な計画と戦略が必要です。
● ターゲットを明確にする
● 他店にはない強みを持つ
● 地域と連携する
● 顧客とコミュニケーションを取る
以上の秘訣について詳しく見ていきましょう。
ターゲットを明確にする
成功の秘訣として、まずターゲット層を明確にすることが重要です。近隣の住民をターゲットとするのか、特定の嗜好を持つ顧客層を狙うのかによって、提供するパンの種類や価格帯、お店の雰囲気も変わってくるでしょう。
例えば、子育て中の主婦層をターゲットにするのであれば、子供と一緒に食べられるような安全で健康的なパンを提供したり、キッズスペースを設けるなどの工夫が考えられます。また、単身世帯や共働き世帯をターゲットにする場合は、手軽に食べられる調理パンや冷凍パンの需要が高まるでしょう。
ターゲットを絞り込むことで、より効果的なマーケティング戦略を立てることができます。
他店にはない強みを持つ
他店との差別化を図り、独自の強みを持つことも重要です。パン屋は競合も多いので、他店にはない魅力的な商品やサービスを提供して、顧客の心を掴む必要があります。
例えば、地元産の食材を使ったパンを提供したり、アレルギー対応のパンを用意したりすることで、特別な価値を提供できます。また、イートインスペースを設けたり、配達サービスを提供したりするなど、顧客のニーズに合わせたサービスも検討しましょう。
地域と連携する
地域との連携は、パン屋を成功させるための重要な要素です。積極的に地域社会に関わることで、地元住民との信頼関係を築き、安定した顧客基盤を確立することにつながります。
地域との連携方法はさまざまです。地元のイベントに参加したり、地域団体に協賛したりすることで、お店の存在をアピールできるでしょう。さらに、近隣の商店と協力関係を築くことも効果的です。例えば、近所のカフェと提携して、お互いのお店の商品を販売しあったり、共同でイベントを開催したりすることで、新たな顧客層を開拓できます。
このように、地域と積極的に連携することで、パン屋は地域に根差した存在となり、長く愛されるお店へと成長できるでしょう。
顧客とコミュニケーションを取る
最後に、顧客とのコミュニケーションを積極的に取ることが大切です。顧客の声に耳を傾け、ニーズを把握することで、より良い商品やサービスの提供につながります。SNSを活用して情報発信をしたり、顧客アンケートを実施したりするなど、顧客との接点を増やす工夫をしましょう。顧客からの質問や意見にも丁寧に回答することで、信頼関係を構築できます。さらに、顧客の誕生日には割引クーポンをプレゼントするなど、特別な機会に合わせたサービスを提供することで、顧客からの愛着を高めることができるでしょう。
顧客との良好なコミュニケーションは、お店のファンを増やし、長期的な繁栄につながる重要な要素です。
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まとめ
本記事では、パン屋を開業するために必要な知識や準備、成功の秘訣について解説しました。パン屋を開業するには、資金計画や必要な手続き、資格の取得、物件探し、メニュー開発など、多岐にわたる準備が求められます。開業資金は、設備投資や運転資金を含め、数100万円から数1,000万円規模となる場合もありますので、計画的な資金管理が重要です。
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