飲食店を開業したいと考えている方の中には、初期費用の高さから踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。しかし、間借り店舗を活用すれば、低資金で飲食店を始められます。そこで本記事では、間借り店舗で飲食店を始める方法について解説します。間借り店舗の飲食店経営に興味がある方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
間借り店舗の飲食店とは
間借り店舗の飲食店とは、他店舗や施設の一部を借りる営業形態のことです。独立店舗と比べ、賃借料が割安なため開業費用を大幅に抑えられるのが特徴です。例えば、カフェやバーの一角を昼間だけ借りてランチ営業をするなどのケースが挙げられます。短期契約も可能な場合があり、事業リスクを軽減しながら飲食店経営に挑戦できるでしょう。
クラウドキッチン・シェアキッチンとの違い
間借り店舗の飲食店に似た言葉として、クラウドキッチンやシェアキッチンがあります。それぞれの主な違いは以下の通りです。
クラウドキッチンやシェアキッチンは厨房スペースのみの提供で、飲食店が調理場所を確保し、デリバリーやテイクアウトで販売することに特化しています。それに対し、間借り飲食店は厨房だけでなく客席も利用して対面販売ができる点が大きな違いと言えるでしょう。一方で、営業時間については貸主店舗の都合に合わせる必要があるため、その分自由度は低くなります。
間借り飲食店の開業費用の相場
通常の物件では、契約時に敷金や礼金、内装や厨房の施工費などさまざまな費用が発生します。しかし、間借り飲食店ではそれらの初期費用はかかりません。
かかるのは毎月の賃料と、使用した分の光熱費や人件費、食材費などです。賃料は店舗の規模やエリア、使用頻度などにより異なりますが、東京都内では10万円前後と言われています。地方都市や人通りが少ない場所の場合は、さらに賃料が低くなるでしょう。
また、貸主の店舗が営業していない時間帯を使って間借り営業をする際は、24時間を借りる時間数で按分した家賃で決まることが多いようです。
1ヶ月毎日営業した場合、運営費用相場には賃料や光熱費、人件費、食材費、そのほか衛生管理に必要な消耗品費や、店舗の設備・備品のメンテナンス費用、広告宣伝費などを計上する必要があります。
開業前には間借り先との契約内容を十分に確認し、収支計画を綿密に立てましょう。
間借りで1日飲食店を経営する費用相場
1日だけ営業してみたい、それから長期的な経営を検討したいという方もいるでしょう。
間借り店舗は1日だけのプランや時間貸しもあるので、1日だけ飲食店を経営することも可能です。
こちらの費用相場も立地や店舗の広さ、設備、使用する曜日などによって異なりますが、安いものなら1時間1,000円〜4,000円前後で借りることができます。なお、光熱費は利用料の中に含まれていることが多いです。
間借り店舗で飲食店をするメリット
間借り店舗で飲食店を始めるメリットは、以下のようなものが挙げられます。
● 低資金でスタート可能
● 店舗移転が容易
● 本業との掛け持ちが可能
● 市場テストに最適
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
低資金でスタート可能
間借り店舗なら、敷金や内装工事費用などの初期投資を大幅に抑えられます。また、光熱費や設備維持費なども按分して負担できるため、固定費を抑えつつ、最小限の資金で開業できるでしょう。
例えば、すでに厨房設備や客席が整っている店舗スペースを借りれば、最低限の什器備品を用意するだけですぐに営業を開始できます。自己資金が潤沢でない方や、事業の成否に不安がある方にとって、間借り店舗は、飲食店起業の有力な選択肢と言えるでしょう。
店舗移転が容易
事業が軌道に乗って売上が伸びてきたら、独立店舗への移転も検討したいものです。間借りなら賃貸借期間が比較的短いケースが多いため、状況に合わせて柔軟に店舗移転ができます。間借り店舗の場合は1年間の期間限定で人気エリアに出店し、その後は別の有望な立地に移転するといったことが可能です。
店舗移転のハードルが低いため、その時々の市場ニーズに合わせて柔軟に立地を変更することができます。
本業との掛け持ちが可能
少ない資金と時間で開業できる間借りなら、平日は本業を続けながら週末のみの飲食店経営も可能です。リスクを抑えつつ、副業としての飲食ビジネスにチャレンジできます。
副収入を得ながら、将来の独立開業に向けた経験を積むことも可能です。本業の仕事で培ったスキルを活かしつつ、料理や接客のノウハウを学べるのも魅力でしょう。
ただし、本業と飲食店経営の両立には体力的な負担がかかります。しっかりとしたタイムマネジメントと体調管理が欠かせません。無理のない計画的な店舗運営を心がけましょう。
市場テストに最適
新業態の出店や新商品の導入時には、いきなり多額の投資をするのではなく、間借り店舗で小規模にテスト販売してみるのも賢明です。お客さまの反応を見ながら、業態や商品を改良していけば、事業リスクを最小限に抑えられるでしょう。
例えば、ランチのみの営業や週末だけの出店など、まずは小規模な運用から始められます。お客さまの評判を見計らいつつ、徐々に営業時間を延ばしたりメニューを増やしたりと、段階的に事業を拡大させていく方法がおすすめです。市場の反応を見極めながら最適化を繰り返し、事業化の目途が立ってから本格的な独立開業に移行するのが賢明だと言えるでしょう。
間借り店舗で飲食店を経営するデメリット
間借り店舗で飲食店を経営する際のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
● 内装・営業時間の自由度が低い
● 売上拡大に限界がある
● 知名度を上げにくい
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
内装・営業時間の自由度が低い
間借り店舗で飲食店を始める際、内装や営業時間の自由度が低いことがデメリットとして挙げられます。特にキッチン設備は貸主側の意向に左右されるため、理想通りの厨房環境を整えることが難しく、提供できるメニューの幅が限られることもあるでしょう。
また、営業時間も貸主店舗の都合に合わせる必要があり、思い通りの時間帯で営業できないことがあります。事前に貸主側とよく協議し、制限の範囲内で実現可能な店舗運営方法を検討することが重要です。
売上拡大に限界がある
間借り店舗で飲食店を経営する場合、売上拡大には一定の限界があります。店舗の面積が限られているため、客席数を大幅に増やすことが難しいのです。また、キッチンスペースも狭いことが多く、調理できる料理の量や種類に制約が生じます。
さらに、営業時間も貸主側の都合に合わせる必要があり、自由に延長することができないため、深夜営業による売上増加も見込みにくいです。
事業規模の拡大を目指す場合は、自前の店舗を構えることも検討しましょう。
知名度を上げにくい
間借り店舗は独自の住所を持たないため、店舗の認知度を上げるのが難しいというデメリットがあります。お客さまに場所を伝える際には「○○店の一角で営業している」といった説明が必要でしょう。貸主店舗の看板が目立ち、自店の存在感を示しにくいのも事実です。
また、営業時間が貸主店舗に依存するため、1日を通した営業ができず、リピーターの獲得やブランディングに苦戦する可能性もあります。
間借り飲食店を成功させるポイント
間借り飲食店を成功に導くには、いくつかの重要なポイントがあります。
● コンセプトの明確化
● 適切な立地の選定
● 料理の質へのこだわり
● SNS等を活用したPR
これらのポイントを意識すると成功への近道となるはずです。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
コンセプトの明確化
間借りで飲食店を始める際、成功のカギを握るのがコンセプトの明確化です。限られたスペースや設備の中で他店との差別化を図り、お客さまに選ばれる店舗となるためには、明確なコンセプト設計が不可欠となります。
例えば、「ランチタイムのOL向けヘルシー料理店」というコンセプトであれば、ターゲットを昼食需要のあるOLに設定し、ヘルシーな料理を中心としたメニュー構成にします。そして、明るく清潔感のある店舗イメージを設計する、といった具合です。ロゴや内装、メニュー構成等、店舗の具体的なイメージを固めることも大切です。
明確なコンセプトを設定することで、間借り店舗の制約の中でも、魅力的な飲食店にすることができるでしょう。
適切な立地の選定
間借り飲食店を成功させるには、適切な立地選びが重要です。立地選定の際は、ランチタイムやディナータイムの人通りが多い場所が理想的です。近隣の競合店の数や業態を調査し、差別化できる立地を選びましょう。
また、最寄り駅からのアクセスが良く、分かりやすい場所を選ぶのも良いでしょう。売上予測を基に、家賃負担が適切な物件選定を行ってください。
特に、ターゲット顧客の多く訪れる場所や、競合店が少ない地域を選ぶことが成功のカギとなります。店舗の看板やメニュー看板が目立つ場所にあるかどうかもチェックしましょう。人通りが多くても、店舗が見つけにくい場所では集客に苦戦してしまうかもしれません。
料理の質へのこだわり
飲食店ですから、もちろん提供する料理の質、こだわりも大切です。限られたスペースや設備でも新鮮で良質な食材を厳選し、美味しさを追求しましょう。
盛り付けにも気を配り、視覚的にも魅力的な料理を心がけます。オリジナリティあふれるメニュー開発にも取り組み、SNSで話題になるような一品を生み出すことで集客アップにもつながるでしょう。
SNS等を活用したPR
間借り飲食店を成功させるには、SNSを活用したPRが欠かせません。特にInstagramは、魅力的な料理の写真を投稿することで潜在顧客の関心を引き付けるのに最適です。以下のようなSNS活用方法を実践しましょう。
また、SNS広告を活用することで、ターゲット顧客に効果的にアプローチできます。例えば、Instagramのプロモーション機能を使えば、近隣エリアの潜在顧客にリーズナブルな費用で広告を配信できます。
SNSでの情報発信を継続的に行い、間借り飲食店の知名度向上とリピーター獲得につなげていきましょう。
間借り飲食店の探し方
間借りでの飲食店経営に適した物件探しは、以下の方法がおすすめです。
● 間借りマッチングサイトの活用
● 間借りやレンタルスペース専門ポータルサイトの活用
● 開業を検討している地域を散策する
これらの方法はそれぞれに異なるメリットがあるため、組み合わせることをおすすめします。
間借りマッチングサイトの活用
間借り飲食店を始める際には、間借りマッチングサイトを活用するのが効果的です。これらのサイトでは、貸主と借主をマッチングするサービスを提供しており、全国の間借り可能な物件情報が集約されています。
間借りやレンタルスペース専門ポータルサイトの活用
間借り飲食店の物件探しでは、間借りやレンタルスペースに特化したポータルサイトを活用するのが効果的です。これらのサイトでは、全国の物件情報が一括で閲覧でき、希望の条件で絞り込み検索することも可能です。
サイト上で直接オーナーとやり取りできるケースも多いため、物件の詳細条件を確認したり、内覧の日程を調整したりと、スムーズに契約に進めるのも大きな魅力でしょう。
開業を検討している地域を散策する
間借り飲食店の候補を探すには、開業を検討している地域を直接散策してみるのも効果的です。実際に現地を歩くことで、その土地の雰囲気や人の流れ、競合店の状況などを肌で感じ取ることができます。
以下のようなポイントを意識しながら、店舗候補を探してみましょう。
また、気になる物件があれば、貸主に直接連絡を取ってみるのも良いでしょう。物件の詳細条件や、これまでの入居者の業種などを聞くことができる可能性があります。
間借りで飲食店を経営する際の注意点
間借り店舗で飲食店を経営する際は、いくつかの注意点があります。
● 契約書を結ぶ
● 資格の取得や許可申請を早めに行う
● 衛生管理を徹底する
● 貸主との信頼関係を築く
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
契約書を結ぶ
間借り営業では貸主の営業許可を使用するため、新たな許可申請は通常不要です。これは、営業許可が店舗単位で取得されるためです。
ただし、契約内容によっては借主側に営業許可取得が求められることがあります。例えば、営業形態や食品が貸主の許可範囲外である場合などです。
契約時は営業許可に関する取り決めを確認し、必要なら貸主と協議しましょう。判断に迷った場合は、保健所に相談するのも一案です。
資格の取得や許可申請を早めに行う
間借り店舗での飲食店経営では、契約書を交わす前に、飲食店営業許可や食品衛生責任者資格など、必要な資格の取得や許可申請を済ませておくことが重要です。保健所への申請や必要書類の準備には時間がかかるため、物件探しと並行して早めに着手しましょう。内装工事の際は建築確認申請も必要な場合があります。これらの手続きを早い段階から計画的に進めることで、円滑な開業が可能になります。
衛生管理を徹底する
間借り飲食店では、衛生管理を徹底することが非常に重要です。食中毒などの衛生上のトラブルは、お店の信用を大きく損ねます。特に、以下の点に注意しましょう。
また、従業員の健康管理にも気を配りましょう。体調不良の場合は、無理をせず休養を取ることが大切です。
衛生管理マニュアルを作成し、全スタッフが遵守できるよう教育することも効果的です。貸主とも協力しながら、安全で清潔な店舗運営を心がけましょう。
貸主との信頼関係を築く
間借り飲食店を成功に導くには、貸主との信頼関係を築くことが不可欠です。以下のポイントを実践し、良好な関係性を保ちましょう。
貸主との良好な関係は、トラブル防止や契約更新時の交渉にも好影響を与えます。些細なことでも相談しやすい雰囲気を作り、互いに尊重し合える信頼関係の構築を心がけましょう。
間借り飲食店に関するよくある質問
間借りで飲食店を経営する際に、気になるのが資格の必要性や確定申告についてではないでしょうか。最後に、間借り飲食店に関するよくある質問をご紹介します。
● 間借りの飲食店経営に資格は必要?
● 間借りの飲食店経営でも開業届けは必要?
● 間借りの飲食店経営でも確定申告が必要?
それぞれの質問と回答を見ていきましょう。
間借りの飲食店経営に資格は必要?
間借りで飲食店を経営する際には、いくつかの資格や許可申請が必要となります。
● 食品衛生責任者の資格:
飲食店営業に必須の資格です。都道府県等が実施する講習会を受講し、修了証を取得します。
● 深夜酒類提供飲食店営業開始届出:
0時から6時までの時間帯にアルコールを提供する場合に、所轄警察署への届出が必要です。
● 酒類販売免許:
瓶詰めのアルコール飲料をお土産として販売する際などに、税務署からの免許取得が必要となります。
● 生食用食肉の取扱届出:
生肉を取り扱う場合は、保健所への届出が必要です。食品衛生法の基準を満たす必要があります。
資格取得や申請には時間がかかるため、早めの準備が肝心です。
間借りの飲食店経営でも開業届けは必要?
間借りで飲食店を経営する場合でも、開業届の提出は必要です。
飲食店を開業する際には、食品衛生法に基づき、保健所への「飲食店営業許可」の申請と、税務署への「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が義務付けられています。
間借りの場合でも、これらの手続きは免除されません。開業届けを提出しないと、税務署から指摘を受けるリスクがあります。
開業届けを提出することで、青色申告による節税効果を受けられるというメリットもあるため、飲食店経営の形態に関わらず、事業を始める際は必ず保健所と税務署への届出を行いましょう。
間借りの飲食店経営でも確定申告が必要?
間借りで飲食店を経営する場合でも、場合によっては確定申告が必要になります。
副業で間借り飲食店を経営した場合、本業で年末調整をしていた場合でも、年間20万円以上の所得があれば申告が必要です。
個人事業主やフリーランスの場合は、売上から経費を引いた所得が48万円以下であれば確定申告の必要はありません。
事業用の銀行口座を作るなど、私的なお金と事業のお金を分けて管理することも大切です。帳簿付けや領収書の保管も欠かさず行い、円滑に確定申告ができるよう備えておきましょう。
テナント物件探しなら「テナリード」へ
飲食店の開業をお考えの方は、ぜひ「TENALEAD(テナリード)」にご相談ください。飲食店を始める際には、物件探しが重要です。「TENALEAD(テナリード)」では店舗開業を目指している方とベストな不動産業者をつなげる事業用物件のマッチングサービスを提供しています。間借りでの飲食店経営が軌道に乗ったら、次のステップとして独立開業も視野に入れましょう。その際には、ぜひテナリードにご相談ください。
間借り店舗での飲食店開業は低コストでスタートでき、自分のペースでビジネスを始められる魅力的な選択肢です。ただし、契約書の締結、必要な許可申請、衛生管理の徹底、貸主との信頼関係構築などに注意しましょう。