ペットとの暮らしに癒しを求める人が増える中、ペットショップの需要は年々高まっています。しかし、動物を扱うビジネスである以上、他業種とは異なる法律や環境基準を満たす必要があるため、開業準備には十分な知識と計画が欠かせません。
本記事では、ペットショップを開業したいと考えている方に向けて、基本情報から資格・手続き、費用、仕入れ方法、成功のポイントなどを分かりやすく解説します。
ペットショップの開業に関する基本情報
ペットショップの開業を検討する際は、業種特有の法律や市場の動向をしっかり理解しておくことが重要です。ペットを取り扱う以上、動物愛護や飼育環境に関するルールを守る必要があり、加えて業界全体の市場規模や今後の需要予測も事業計画に大きく影響します。
ここでは、ペットショップを開業する上で押さえておきたい基本情報を確認していきましょう。
遵守すべき法律
ペットショップを開業するにあたっては、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」の遵守が欠かせません。特に動物の取り扱いや飼育環境については詳細な基準が定められており、開業前の準備段階から法律に則した体制を整えておく必要があります。
たとえば、動物のストレス軽減や健康維持を目的とした広さや清潔さ、温度管理といった飼育スペースの確保などが挙げられます。違反すると業務停止命令や登録取消などの行政処分を受けることもあるため、法令遵守を徹底した運営体制が求められます。
市場規模
日本国内におけるペット市場は、安定した成長を続けている分野の一つです。
2023年度のペット関連総市場規模は、小売金額(末端金額)ベースで、前年度比104.5%の1兆8,629億円となっており、ニーズが高く成長性のあるビジネスであることがわかります。
特に市場規模が大きく推移したのは2020年で、前年2019年と比較して107.2%も購入金額を伸ばしました。これはコロナ禍による在宅勤務の増加が大きく影響しているとされています。
特に犬・猫を中心としたコンパニオンアニマルの需要は堅調であり、フードや医療、保険、アフターサービスといった周辺ビジネスも拡大中です。高齢化社会や単身世帯の増加により、癒しやパートナーとしての役割を期待されるケースも増えており、ペットショップに対するニーズは今後も持続すると見られています。
参考:ペットビジネスに関する調査を実施(2024年)
近年のトレンド
近年、ペットショップ業界ではさまざまなトレンドが生まれています。
たとえば、保護犬・保護猫の譲渡を組み込んだ店舗や、ペットホテル・トリミングを併設した複合型ショップ、小規模ながらも専門性に富んだ店舗など、多機能化・サービス型へと進化しています。
また、顧客のペットライフをサポートするペット用品専門店や、グルーミング特化型店舗といったコンセプト重視の運営スタイルも増加中です。さらに、フォトブースの設置や撮影サービスを取り入れるなど、体験型の店舗づくりも注目されています。
ペットショップ開業に必要な資格・手続き
ペットショップ開業に必要な資格や手続きとして、以下の2種類が挙げられます。
・第一種動物取扱業の取得
・動物取扱責任者の選任
ここでは、それぞれの手続き内容と取得要件について具体的に解説します。
第一種動物取扱業の取得
ペットの販売や保管、貸出しなどを行うには、「第一種動物取扱業」の登録が必須です。これは動物愛護法に基づいた制度で、都道府県や政令指定都市などの自治体に申請して取得します。
申請には、登録申請書の他に業務内容や飼養施設の図面などの書類の提出が求められ、管轄行ちゃん政による実地検査が行われるのが一般的です。地域などによって異なりますが登録完了までには3週間程度かかるため、物件契約後は早めに準備し始めることをおすすめします。
動物取扱責任者の選任
第一種動物取扱業を登録するには、事業所ごとに1名以上の動物取扱責任者の選任が義務付けられています。
責任者として認定されるには、「獣医師資格を持っている」「愛玩動物看護師の免許を持っている」「過去に一定期間、動物取扱業に従事していた」などが挙げられます。ただし、自治体などによって詳細な認定基準が異なる場合があるため、事前に確認しておくことが大切です。
責任者の役割は、店舗運営における法令遵守と飼育管理の質を担保する重要なポジションであり、信頼される店舗づくりの基盤となります。
ペットショップ開業に必要な資金
ペットショップを開業する際、他の小売業と比較して多くの設備や環境整備が必要となるため、ある程度まとまった資金が必要です。そのため、初期費用の内訳をしっかり把握し、適切な資金計画を立てることが求められます。
ここでは、開業に必要な資金の内訳と調達方法の考え方について詳しく紹介します。
開業資金の内訳
ペットショップを開業する際、一般的な内訳として以下のような内容が挙げられます。

ペットショップは動物を扱うため、法令に基づく飼育スペースや衛生設備の整備も必要となり、一般的な物販店より初期費用が高くなる傾向にあります。
また、開業資金は店舗の規模や立地、取扱品目の種類によって大きく変動するため、計画段階で細かく見積もることが重要です。
資金調達の方法
自己資金だけでまかなうのが難しい場合は、外部からの資金調達を検討すると良いでしょう。ペットショップのように地域性と専門性を伴う事業では、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や、地方自治体の創業支援制度を活用するケースが多く見られます。
これらの融資を受けるには具体的な事業計画書や収支予測の提出が必要であり、計画の現実性と実行力が審査のポイントとなります。開業準備中に利用できる助成金・補助金も存在するため、制度の対象要件や応募期間を早めに確認しておくと良いでしょう。
店舗開業の際に活用できる助成金や補助金については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
「開業時におすすめの補助金・助成金制度11選。申請時の注意点も解説」
ペットショップ開業の流れ

ペットショップ開業の主な流れは以下の通りです。
・コンセプト設定
・事業計画・資金計画の立案
・物件探し・設備準備・各種申請
・仕入れ・プレオープンの実施
ペットショップの開業には、段階的に準備すべき事項が多くあります。ここでは、開業までの基本的な流れを4つのステップに分けて解説します。
1)コンセプト設定
開業準備を始める上で、まず最初に取り組むべきなのが「どんなペットショップにしたいか」というコンセプトの明確化です。一口にペットショップといっても、「子犬・子猫に特化した販売型の店舗」や「保護動物の譲渡を目的とした施設」などでは、求められる設備やサービスは大きく異なります。
また、ファミリー層や単身者、高齢者など、地域の顧客層によっても求められるものが変わってきます。コンセプトを決める際は、店舗の立地や地域性を踏まえつつ、他店との差別化につながるような強みや魅力を整理した上で設定するのが大切です。
2)事業計画・資金計画の立案
次に行うのが、売上目標や運営体制を明記した事業計画や、設備投資や仕入れ、運転資金などを盛り込んだ資金計画の作成です。ペットショップは他の小売業と比べて管理コストが高く、継続的な運転資金が必要となるため、現実的で無理のない計画が求められます。
仕入れ先や人材確保、サービス内容、地域ニーズへの対応方法などを具体的に記載することで、信頼性の高いプランになります。
3)物件探し・設備準備・各種申請
計画が整ったら、実際に営業する物件の選定と設備の準備に入ります。「ペットの飼育に適した環境が整っているか」「水回り・換気・排水設備などが基準を満たしているか」などを確認し、必要に応じて内装工事を行います。
また、第一種動物取扱業の登録や動物取扱責任者の選任など、法的手続きもこの段階で進める必要があります。物件によっては業種制限があるため、開業可能かどうか事前に確認することが重要です。
4)仕入れ・プレオープンの実施
店舗が完成し、法的な準備が整ったら、いよいよ商品の仕入れに移ります。犬や猫といった生体だけでなく、ケージやフード、おもちゃなどの関連商品も揃え、陳列や動線を整えていきます。
オープン前は、関係者を対象としたプレオープンを実施しておくと実際のオペレーションを確認でき、改善点の洗い出しにもつながります。さらに、SNSやチラシなどを活用した告知活動もこのタイミングで始め、地域への認知拡大を図ると良いでしょう。
ペットショップの主な仕入れ方法
ペットの仕入れ方法として、以下の3つが挙げられます。
・ブリーダー
・オークション
・自社で自家繁殖
ペットショップを運営する上で欠かせないのが、動物や関連商品の安定した仕入れ体制です。信頼性の高い仕入れ先を確保することは、店舗の評判や顧客満足度に直結します。
ここでは代表的な3つの仕入れ方法について、それぞれの特徴と注意点を具体的に解説します。
1)ブリーダー
ブリーダーとは、特定の犬種や猫種などを計画的に繁殖・飼育し、販売する専門業者のことです。ブリーダーから直接仕入れることで、親の血統や健康状態、育成環境などを把握しやすくなり、顧客に対しても安心感を提供できます。
また、ブリーダーと継続的な取引関係を築くことで、安定供給や特定種の取り扱いに柔軟に対応できる点も魅力です。ただし、ブリーダーの中には悪質な業者も存在し、不適切な環境で繁殖されているケースもあるため、慎重な対応が求められます。
2)オークション
動物のオークションは複数の業者やブリーダーが出品し、小売業者が競り形式で仕入れる仕組みです。犬猫を中心に取り扱う会場が多く、一定数を一度に仕入れられることから品揃えの幅を持たせたい店舗にとって有力な手段です。
オークションは相場より安く仕入れられる可能性がある反面、動物の状態を細かく確認できないリスクも伴います。健康状態や性格などを見極める目が必要なため、オークションの利用にはある程度の経験が求められます。
3)自社で自家繁殖
自社で繁殖設備を整え、自家繁殖によって販売する方法もあります。この方法は、繁殖から販売までを自社で管理できるため、健康状態や性格、成育環境を明確に把握でき、顧客への説明や対応にも信頼性が生まれます。
また、外部仕入れに比べてコストを抑えられる場合もあります。ただし、繁殖には専門的な知識と手間がかかり、母体となる動物の健康管理や適切な環境の整備が不可欠です。
さらに、繁殖頭数に応じた施設・人材の確保も必要であり、開業当初からの導入はハードルが高いです。自家繁殖を行う場合は、段階的に取り入れる形が現実的といえるでしょう。
ペットショップ開業時の注意点
ペットショップ開業時の注意点として、以下の3つが挙げられます。
・飼育環境の基準・法律を遵守する
・地域によって異なる出店規制に注意
・顧客対応・アフターケア体制も重要
ペットショップの運営には、一般的な小売業以上に多くの責任が伴います。動物を扱うという特性上、法令や倫理面での配慮が欠かせず、顧客との信頼関係を築くためにも丁寧な対応が求められます。
ここでは、開業時に特に注意すべき3つのポイントについて具体的に解説します。
飼育環境の基準・法律を遵守する
ペットショップでは、動物の種類や数に応じた飼育環境が法律で厳しく定められています。
たとえば、動物愛護法や環境省の告示に基づく「適正飼養管理基準」により、ケージの大きさや照明、換気、温湿度管理、運動時間の確保などが細かく規定されています。これらを遵守せずに営業した場合、行政からの是正命令や営業停止処分を受けることもあります。
動物の健康やストレスを最小限に保つためにも、法的基準以上に快適な飼育環境づくりを意識することが大切です。
地域によって異なる出店規制に注意
ペットショップを出店する際には、エリアごとに定められた用途地域や条例による制限にも注意が必要です。
たとえば、第一種住居地域などでは動物の騒音や臭いによる近隣トラブルを避けるため、ペット関連事業の出店が難しい場合があります。
また、自治体によっては「動物取扱業の届出」が受理されない立地もあるため、物件を契約する前に必ず所轄の自治体や保健所への確認を行うようにしましょう。事前の情報収集を怠ると、せっかく決めた物件で営業ができないという事態になりかねないので注意してください。
顧客対応・アフターケア体制も重要
ペットは生き物であるため、販売後も継続的なサポートが求められるケースが多くあります。
たとえば、「しつけがうまくいかない」「体調を崩した」などの相談に対して、適切なアドバイスや専門家の紹介ができる体制を整えておくと顧客からの信頼が得られやすくなります。
また、販売時の説明不足やミスマッチによるクレームを防ぐためにも、購入前にしっかりとしたヒアリングと情報提供を行うことが大切です。単なる販売業ではなく、顧客と動物の「幸せな関係づくり」をサポートする姿勢が長く愛される店舗運営の鍵になります。
ペットショップ開業を成功させるためのコツ

ペットショップ開業を成功させるためのコツとして、以下の3点が挙げられます。
・信頼される仕入れと飼育・販売体制を構築する
・地域密着型で常連客をつくる運営を目指す
・SNSや口コミを活用した集客で認知を広げる
ペットショップを軌道に乗せるためには単に動物を販売するだけでなく、顧客との信頼関係や継続的な集客につながる工夫が欠かせません。
ここでは、成功するペットショップづくりのために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
信頼される仕入れと飼育・販売体制を構築する
動物の仕入れ先は、店舗の信用やトラブルの発生リスクに直結します。そのため、信頼できるブリーダーや業者から健康状態の良好な個体を仕入れることが基本です。
また、購入希望者に対してワクチンの接種状況や飼育履歴を丁寧に説明するなど、透明性の高い販売体制を整えることも重要です。さらに衛生管理も徹底し、スタッフの教育も欠かせません。
顧客の安心感と信頼を得るためには、動物への愛情と責任を持って接する姿勢が求められます。
地域密着型で常連客をつくる運営を目指す
ペットショップは、一度の購入だけでなく継続的な来店が期待できるビジネスです。消耗品の購入やトリミング・ペットホテルといったサービスを提供することで、地域のペットオーナーから長く愛される存在になれます。
地域のニーズを細かく拾い上げて「この街のペットの相談窓口」として認知されれば、常連客が増えて安定した収益が見込めるようになります。それだけでなく、口コミによる新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
SNSや口コミを活用した集客で認知を広げる
現代の集客において、SNSの活用は欠かせません。Instagramでかわいらしいペットの写真を投稿したり、X(旧Twitter)で飼育に関する豆知識を発信したりすることで、店舗のファンを増やすことができます。
また、Googleビジネスプロフィールや口コミサイトへの掲載も有効です。実際に購入した顧客からのレビューや体験談は、信頼性の高い情報として新規顧客の来店動機になります。
SNSと口コミをうまく組み合わせることで、より効率的な集客を実現できるでしょう。
理想の店舗物件を見つけるなら「テナリード」
ペットショップの開業において、物件選びは成功を左右する重要な要素です。立地条件や広さ、設備の整い具合だけでなく、動物取扱業の登録が可能な物件かどうか、近隣住民との関係性や騒音対策なども慎重に見極める必要があります。
しかし、すべて自分で行うとなると手間や時間がかかり、なかなかうまくいかないことも少なくありません。そこで活用していただきたいのが、事業用物件に特化したマッチングサービス「TENALEAD(テナリード)」です。
テナリードでは、店舗開業を目指している方とベストな不動産業者をつなげる事業用物件のマッチングサービスを提供しています。物件探しでは見つけにくい非公開物件やペット業種にも対応可能な物件情報を取り扱っており、希望条件に応じたマッチングが可能です。
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