店舗開業には、業界・業種によってさまざまな資格が必要になります。飲食店やカフェなどの飲食店を開業する際は、安全性や衛生管理などに関する資格が重要です。一方で、ネイルサロンや花屋など、資格がなくても開業できる業種もあります。本記事では、開業に必要な資格や知っておくべき開業の注意点を詳しく解説します。
店舗を開業するのに必要な資格は?
店舗を開業するために必要な資格は、業界・業種によって大きく異なります。飲食店であれば食品衛生責任者、リサイクルショップであれば古物商許可など、必要とされる資格の種類も変わってきます。そのため、開業を検討している方は、自身が参入を予定している業界・業種でどのような資格が必要なのかを入念に調べておくことが重要です。資格の取得には、一定の期間と費用がかかるケースもあります。開業のスケジュールを立てる際は、資格取得に要する時間も考慮しておきましょう。
資格の種類
資格の種類は大きく分けて、国家資格と民間資格の二種類があります。
国家資格は、法律に基づいて国や地方自治体が認定する資格です。例えば、医師、看護師、薬剤師、柔道整復師などが該当します。これらの資格は、その職業に就くために必須であり、試験に合格する必要があります。
一方、民間資格は、民間の企業や団体が独自に認定する資格です。例えば、ソムリエ、フードコーディネーター、食育インストラクターなどが該当します。これらの資格は、特定の職業に就くために必須ではありませんが、店舗開業後の運営に有利になる場合があります。
それでは、各業種ごとに必要な資格や取得しておくと良い資格を紹介していきます。
飲食店の開業に必要な資格
飲食店の開業に必要な資格は、下記の2つです。
● 食品衛生責任者
● 防火管理者
他にも取得しておくと良い資格があるので、併せてご紹介します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者は、食品衛生法により、飲食店を開業するために必ず取得しなければならない資格です。
食品衛生責任者は、飲食店における食品衛生の管理責任者として、食中毒の防止や衛生的な食品の取り扱いについて重要な役割を担っています。資格の取得には、各自治体で開催されている食品衛生責任者養成講習会を受講する必要があります。講習会は通常1日で終了するため、比較的短期間で取得可能です。飲食店の開業を検討している方は、食品衛生責任者養成講習会の日程を確認し、受講の予約をしておきましょう。
出典:食品衛生責任者について
防火管理者
防火管理者は、飲食店の開業に必要な資格の一つです。
防火管理者は、その名の通り、火災の予防と発生時の適切な対応を行うための責任者です。具体的には、消防計画の作成や避難訓練の実施、消防用設備等の点検・整備、従業員への防火教育などを行います。飲食店では、従業員と客席の合計が30人以上の場合、防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者になるためには、各地の消防署や防火・防災協会などで実施されている講習を受講しなければいけません。防火管理者の選任が必要な場合は、最寄りの消防署や防火・防災協会で必要な手続きを進めましょう。
取得しておくといい資格
飲食店の開業では、調理師免許の取得がおすすめです。
飲食店の開業において調理師免許は、必須ではありません。しかし、調理師免許を持っていれば、食品衛生管理の知識や調理技術を証明できます。また、調理師免許を取得しておけば、食品衛生責任者の資格を取得するための講習会を受けなくても済むというメリットもあります。
また、開業予定の店舗コンセプトに合わせて、専門的な資格を取得しておくのも有効です。例えば、ビアバーを開業する場合は「ビアテイスター」、コーヒー専門店なら「コーヒー鑑定士」などの資格を取得しておくことで、店舗の専門性をアピールできるだけでなく、商品知識や提供するサービスの質の向上にもつながります。
マッサージ店の開業に必要な資格
マッサージ店の開業に必要な資格は、下記の3つです。
● あん摩マッサージ指圧師
● はり師・きゅう師
● 柔道整復師
他にも取得しておくと良い資格があるので、併せてご紹介します。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師は、あん摩、マッサージ、指圧を仕事にするために必要な国家資格です。
あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するためには、文部科学大臣または厚生労働大臣に認定された学校に通い、国家試験に合格する必要があります。資格取得には数年かかるため、開業前に十分な計画を立て、準備を進めることが重要です。
はり師・きゅう師
はり師・きゅう師は、はりやおきゅうなどの器具を使ってマッサージや施術を行うために必要な国家資格です。はり師・きゅう師の資格を取得するためには、文部科学大臣や厚生労働大臣、都道府県知事に認定された専門学校や養成施設に通い、国家試験に合格する必要があります。はり師・きゅう師の資格を取得することで、お客様に安心・安全な施術を提供できるだけでなく、店舗の信頼性を高めることにもつながります。
柔道整復師
柔道整復師は、骨折や脱臼、打撲、捻挫などの外傷性の怪我を、治療する場合に必要な国家資格です。
整骨院やほねつぎ、接骨院などを開業する際には、柔道整復師の資格が必須となります。柔道整復師の資格を取得するためには、文部科学大臣や都道府県知事が指定する学校に通い、所定の課程を修了した後、国家試験に合格する必要があります。柔道整復師の資格を取得することで、骨折や脱臼などの外傷の治療だけではなく、スポーツ選手の怪我の治療や予防にも携わることができ、幅広いニーズに対応できるでしょう。
取得しておくといい資格
マッサージ店の開業には、国家資格以外にも、お店のコンセプトに合わせた民間資格の取得がおすすめです。
例えば、アロマテラピーを提供するお店であれば、「アロマテラピー検定」や「アロマテラピーアドバイザー」などの資格を取得しておくと良いでしょう。これらの資格は、アロマテラピーに関する専門的な知識や技術を証明するものであり、お客様に安心・信頼感を与えられます。また、足つぼマッサージを提供するお店であれば、「リフレクソロジスト」の資格を取得しておくのも有効です。足つぼマッサージは、足裏にある反射区を刺激することで、体の不調を改善するマッサージ方法です。リフレクソロジストの資格を持っていれば、お客様に安心・安全な施術を提供できるだけでなく、専門性をアピールできます。
リサイクルショップの開業に必要な資格
リサイクルショップの開業に必要な資格は、古物商許可です。その他、リサイクルショップの開業にプラスになる資格もご紹介します。
古物商許可
古物商許可はリサイクルショップを開業するために必須の資格で、古物営業法により定められた古物(※一度使用された物品や中古品)の売買や交換、委託販売などを行います。リサイクルショップは主に古物の買取や販売を行う店舗のため、古物商許可の取得が義務付けられています。そのため、リサイクルショップ開業時は都道府県公安委員会から古物商許可を取得しましょう。もし古物商許可未取得の事業者が古物営業を行った場合、古物営業法違反で処罰対象となってしまうため、注意が必要です。
取得しておくといい資格
リサイクルショップの開業において、「リユースバイヤー検定」や「リユース業務士」などの専門的な資格を取得することで、同業他社との差別化を図れます。
「リユースバイヤー検定」は、リユース品の買取や査定に関する専門知識を証明する民間資格です。この資格を取得することで、お客様に対して適正な価格での買取を行えることをアピールでき、信頼感を高められます。
「リユース営業士」は、リユース業界における幅広い知識を証明する資格です。リユース品の買取・販売だけでなく、法律や経営に関する知識も身につけられます。この資格を取得することで、リサイクルショップ経営者としての専門性を示せます。
これらの資格を取得していることを店舗の広告やWebサイトなどで積極的にPRすることで、「専門知識を持ったプロが運営するお店」という印象を与えられ、他店との差別化を図れるでしょう。
不動産の開業に必要な資格
不動産の開業に必要な資格は、宅地建物取引士です。その他、不動産の開業に有利な資格もご紹介します。
宅地建物取引士の資格
宅地建物取引士は、不動産の売買や賃貸借などの「仲介業」を行う際に必要な国家資格です。宅建業法により、不動産仲介業を営む事業所には、5人に対して1人の割合で「宅地建物取引士」を配置することが義務付けられています。宅地建物取引士の資格を取得するためには、都道府県知事が年1回実施する「宅地建物取引士資格試験」に合格する必要があります。宅地建物取引士の資格取得は、不動産業界でキャリアを築く土台となります。
取得しておくといい資格
不動産業界で専門性を高めるためには、不動産鑑定士の資格取得がおすすめです。
不動産鑑定士は、不動産の価値を客観的に判断し、適正な価格を算出できる専門家です。不動産の適正な価格を判定するために、物件の立地条件や建物の状態、将来の価値の変動などを総合的に分析します。不動産売買や賃貸借の際に、適正な価格設定が行えるため、取引の透明性を高められます。
資格を取得しなくても開業できる業種
資格を取得しなくても開業できる業種は、下記3つの例が挙げられます。
● 花屋
● ネイルサロン
● 脱毛サロン
3つとも資格なしで開業できる業種ですが、取得しておくと有利になる資格をご紹介します。
花屋
花屋の開業には、法律で定められた必須の資格はありません。
そのため、花の知識や技術、経営ノウハウがあれば、比較的容易に開業できます。また、花屋の販売方法に固定のルールはないため、オーナーのセンスやアイデア次第で自由に事業展開が可能です。
花屋の開業に特別な資格は必要ありませんが、「フラワー装飾技能士」の資格取得がおすすめです。フラワー装飾技能士は、フラワーアレンジメントやお花の装飾に関する唯一の国家資格です。この資格を取得することで、花の知識や技術が一定の基準に達していることを証明できます。
フラワー装飾技能士の資格を持っていることで、お客様に高い技術力をアピールできるでしょう。
ネイルサロン
ネイルサロンの開業には、特別な資格は必要ありません。ただし、お客様に高品質なサービスを提供するためには、ネイルの技術を磨き、専門性を高めることが重要です。
その一つの方法として、「ネイリスト技能検定試験」の取得がおすすめです。この検定試験は、ネイルの正しい技術と知識の向上を目的としており、3級と2級に分かれています。2級の検定に合格すれば、プロとして通用するスキルの証明になります。この資格を取得することで、お客様に対してより高い技術力とサービスを提供できるでしょう。
脱毛サロン
脱毛サロンを開業する際、一般的な光脱毛を提供する脱毛サロンの場合、特別な資格は必要ありません。ただし、医療脱毛のようにレーザーやニードルを使用する場合は、医療従事者の資格が必要です。
他にも、脱毛サロンとして同業他社と差別化して、お客様に高品質なサービスを提供したい場合は「脱毛士検定」の取得がおすすめです。この検定は3級、2級、上級の3つの級に分かれており、脱毛に関する理論知識・施術方法・サービスノウハウまで体系的に学べます。脱毛士の資格を取得することで脱毛に関する正しい知識が身につき、お客様に対して脱毛の専門家としてアピールできます。
資格の取得以外に知っておくべき開業の注意点
資格の取得以外に知っておくべき開業の注意点は、下記の通りです。
● 資格以外に様々な書類の「届出」が必要
● 開業資金をしっかり準備する
● 具体的な経営プランを立てる
● テナント物件は比較して慎重に検討する
資格以外に様々な書類の「届出」が必要
店舗を開業する際には、必要な資格取得だけでなく、業種や場所によってさまざまな届出が必要です。
具体的には、下記のようなものがあります。
必要な届出は、地域や業種によって異なるため、事前に管轄の役所や関係機関に問い合わせて、必要な手続きや書類を把握しておくことが重要です。
開業資金をしっかり準備する
店舗を開業するためには、開業資金の確保が重要です。
まずは初期投資として、店舗の賃料、内装工事費、備品購入費、許認可申請費用などが発生します。また、開業後の運転資金として、3~6ヶ月分の売上見込み額を用意しておかなければいけません。人件費、光熱費、広告宣伝費など、毎月の固定費用をしっかりと見積もり、余裕を持った資金計画を立てましょう。
具体的な経営プランを立てる
店舗開業を成功させるためには、具体的な経営プランを立てることが重要です。
下記3つのポイントを押さえて、経営プランを考えましょう。
経営計画は、事業の成功を導くための指針となります。しっかりと時間をかけて、実現可能な計画を立てることが大切です。
空きテナントは比較して慎重に検討する
店舗開業におけるテナント物件を選ぶ際は、下記チェックポイントを参考に、慎重に比較検討しましょう。
テナント選びは、店舗運営の最重要事項といっても過言ではありません。最適な物件を見つけるため、十分な時間をかけて選びましょう。
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本記事では、開業に必要な資格について業種ごとに解説しました。
店舗開業に必要な資格は、業界・業種によって異なります。開業に必要な主な資格としては、「食品衛生責任者」や「防火管理者」、「宅地建物取引士」などが挙げられます。一方で、花屋やネイルサロン、脱毛サロンなどは、法律で定められた必須の資格はなく、比較的開業しやすい業種です。同業他社と差別化し店舗開業を有利にするためには、専門性を証明する民間資格の取得がおすすめです。本記事を参考に、開業に必要な準備を進めましょう。
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