店舗を開業する際に、自身で物件を購入するのは大きな初期投資が必要となり、リスクも高くなります。そこで、まずは賃貸物件で店舗をスタートさせることが多くの開業者に選ばれています。
そこで本記事では、店舗賃貸のメリットや開業する際に注意したい選び方のポイントをご紹介します。賃貸で店舗を始めたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
賃貸物件で店舗を始める流れ
店舗を賃貸物件で始める際は、以下の流れで進めていきます。
● 立地を確認する
● 広さと間取りを確認する
● 賃料や付帯費用を見積もる
● 権利関係を確認する
● 設備状況を確認する
それぞれの点について詳しく見ていきましょう。
立地を確認する
店舗開業の成功には立地が極めて重要です。人通りが多く、競合店が過剰でないところを選びましょう。人通りが多ければ新規開業でも一目につきやすく、集客に成功しやすいです。
また、対象顧客層に合った立地かどうかも見極める必要があります。例えば、飲食店なら人通りが多い方が良いですが、予備校や学習塾なら住宅街が適しているでしょう。対象顧客層に合わない立地では集客が難しくなります。
交通の利便性や駐車場の有無なども考慮し、十分な事前調査を行いましょう。
需要が見込め、競争に勝ち残れるエリアを選ぶことが大切です。
広さと間取りを確認する
店舗賃貸の選び方において、広さと間取りを確認することも大切です。業種によって必要な広さは異なるため、自身の事業に適した広さの物件を選ぶ必要があります。例えば、飲食店なら厨房スペースや客席スペース、物販店なら売り場スペースや在庫スペースなど、業種に応じて十分な広さを確保することが求められます。
また、単に広さだけでなく、効率的な動線になっているかもチェックしましょう。店内で行き来する動線が無駄なく設計されていれば、業務の効率化やお客様の利便性向上につながります。例えば、厨房と客席が近接していれば料理の提供が円滑になりますし、入り口と売り場が近ければ購買行動を促進できます。
賃料や付帯費用を見積もる
店舗賃貸の賃料は、立地や広さ、設備状況などによって大きく異なります。適正水準を知るためには、同じエリアの同程度の物件の相場を調べることが重要です。不動産仲介業者に相談するのが確実な方法でしょう。
賃料以外にも、光熱費や管理費など月々の維持費や、内装工事や備品購入など、開業時の初期投資についても概算を立てる必要があります。また、物件の状態によっては大規模な改装が必要な場合もあり、工事費用がかさむ可能性があるでしょう。
このように、店舗賃貸では賃料だけでなく、維持費や改装費など、トータルでの費用を算出することが欠かせません。十分な調査と計画を立てることで、無理のない開業資金を準備できます。
権利関係を確認する
店舗物件を賃借する際は、建物の残存期間にも注意しましょう。建物の残存期間が短い場合、契約期間内に建て替えや解体の可能性があるため、できれば残存期間10年以上のものを選ぶのが賢明です。
転貸や賃貸借契約の内容にも注意しましょう。転貸物件の場合、最終的な貸主が誰なのかを確認する必要があります。
賃貸借契約では、解約時の違約金の有無、賃料改定ルール、営業用途の制限など、借り手に不利な条件がないか精査します。契約書の内容を熟読し、不明な点は質問して確認しましょう。
設備状況を確認する
開業を検討する店舗物件の設備状況を確認する際は、空調設備の冷暖房能力、電気容量の十分性、上下水道の状況、防犯・防災対策の万全さなどをよくチェックしましょう。
空調設備は、店舗の広さに応じて適切な冷暖房能力があるかどうかを確かめましょう。夏場の暑さ対策や冬場の暖房対策が不十分だと、来店客の快適性が損なわれてしまいます。
また、適切な空調や電気容量がなければ営業に支障が出る恐れがありますし、水回りに不備があると衛生面での問題が生じかねません。また、防犯カメラや消火設備など、万一の事態に備えた対策が不十分だと危険です。このように設備面での状況確認は、スムーズな店舗運営のために欠かせません。
店舗に最適な賃貸物件を探すには
店舗に最適な賃貸物件を探すには、以下の方法を活用するのがおすすめです。
● テナント物件専門サイトの活用
● 不動産仲介業者の活用
● 自分の足で探すのも一つの方法
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
テナント物件専門サイトの活用
店舗の賃貸物件を探す際、一般の賃貸物件サイトだけでなく、テナント物件に特化したサイトを活用することをおすすめします。テナント物件専門サイトでは、一般の賃貸物件では見つけにくい、商業地域の店舗向け物件が多数掲載されています。
商業地域の物件が集約されており、店舗開業に適した物件を効率的に探せることや、家賃や権利金の相場がわかりやすいことがメリットとして挙げられます。
不動産仲介業者の活用
店舗物件を探す際は、不動産仲介業者を活用するのが一般的です。仲介業者には豊富な物件情報があり、条件に合った物件を効率的に探すことができます。
● 一般公開されていない物件情報も入手可能である
● 立地や賃料相場などの助言が得られる
● 賃料や条件の交渉を仲介業者が代行してくれる
以上の点がメリットとして挙げられるでしょう。
手数料は発生しますが、不動産に精通した専門家に依頼すれば、物件探しからオープンまでをスムーズに進められます。手数料分のコストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
自分の足で探すのも一つの方法
良い条件の物件を見つけるにはインターネットでの情報収集も大切ですが、実際に現地を訪れて自分の目で確かめることも大切です。立地や周辺環境、アクセスのしやすさなど、実際に足を運んでみないと分からないことも多いためです。
テナント専門サイトで絞り込んだ物件候補を、一つひとつ実際に見て回ることで、自分にぴったりの店舗物件が見つかるはずです。
店舗開業にかかる初期費用とは
店舗を賃貸物件で開業する場合には、さまざまな初期費用が発生します。主な費用としては以下のようなものがあります。
● 敷金・礼金や前家賃
● 仲介手数料
● 内装工事や備品費
● 広告宣伝費
それぞれの費用について詳しく確認していきましょう。
敷金・礼金や前家賃
店舗の賃貸物件を借りる際にかかる初期費用の一つに「敷金」「礼金」「前家賃」があります。
礼金とは、賃貸借契約を結ぶ際に賃貸人(大家)に一時金として支払う金額のことです。「賃料の何ヶ月分」という具合に決められており、例えば賃料が10万円で礼金が10ヶ月分の場合、100万円の一時金が必要になります。
一方、前家賃とは契約時に前もって賃料を2〜6ヶ月分前払いすることです。この例だと、20万円〜60万円が前家賃として必要になります。
礼金や前家賃は高額になる可能性があり、店舗開業の初期費用が大きくなる要因です。賃貸物件を検討する際は、礼金や前家賃の有無と金額を確認し、事前に準備しておきましょう。
仲介手数料
店舗賃貸物件を借りる際は、一般的に不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料とは、不動産会社が物件の紹介や契約手続きを行った対価として受け取る報酬のことです。
仲介手数料の金額は以下の2つの方法で算出されることが多いです。
● 月額賃料の1ヶ月分:例えば月額賃料が10万円の場合、仲介手数料は10万円となります。
● 賃料の一定割合:契約期間の賃料総額に対して一定割合(一般的に6〜8%程度)が仲介手数料としてかかります。
なお、仲介手数料のほかにも、契約更新時の手数料や月々の管理費用など、さまざまな費用が発生する場合がありますので、契約前にしっかりと確認しましょう。
内装工事や備品費
店舗開業の際には、内装工事や備品の購入が欠かせません。賃貸物件の場合はオーナー側の許可が必要な場合が多いので、事前に確認しましょう。
内装工事の費用は、物件の広さや希望の内装レベルによって大きく変わります。簡易的な内装工事なら20万円程度から、本格的な工事となると100万円以上の費用がかかる可能性もあるでしょう。
また、備品についても、厨房機器や店舗用家具、事務用品など、お店の業態によって必要な品目は異なります。内装工事費と備品代を合わせると、最低でも100万円以上の初期費用が見込まれるため、十分な予算計画を立てておくことをおすすめします。
広告宣伝費
店舗をオープンするにあたり、広告宣伝費は欠かせません。集客のためには、効果的な広告宣伝が不可欠です。広告宣伝の方法は、チラシやウェブサイト、SNS広告、看板などが挙げられます。特に、オープン時の宣伝効果が高いチラシやウェブサイト、SNS広告には力を入れることをおすすめします。チラシは近隣へ配布し、ウェブサイトやSNSでは商品・サービス内容を詳しく紹介しましょう。
初期の広告宣伝費は20万円〜50万円程度を見込んでおくと良いでしょう。開業を成功させるには、しっかりと予算を確保して効果的な宣伝活動を行うことが求められます。
賃貸物件で店舗を始めるメリット
賃貸物件で店舗を始めるメリットはたくさんあります。
● 初期投資が抑えられる
● 立地が良い物件を選べる
● スムーズに退店できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
初期投資が抑えられる
賃貸物件で店舗を始める最大のメリットは、初期投資を大幅に抑えられることです。店舗用の土地や建物を購入する場合、数千万円から億単位の出費が必要となります。しかし賃貸の場合は、敷金・礼金、内装工事費、備品代などを支払えば開業できます。
資金に余裕がない個人や中小企業にとって、大きなメリットと言えるでしょう。不動産購入に比べ、リスクも抑えられるのが賃貸物件の利点です。
立地が良い物件を選べる
店舗の賃貸物件を選ぶ際、立地は最も重要な要素の一つです。賃貸物件であれば、立地の良い物件を選びやすくなるでしょう。
駅から近い立地は、来客の利便性が高く、集客しやすいメリットがあります。また、商業地域や繁華街などの需要の多い立地なら、潜在的な顧客層が多くなります。
立地の良し悪しは、業種によってニーズが異なります。賃貸物件は選択肢が広がるため、自身の業種に合わせて、立地の良い物件を選びやすくなるのが大きなメリットです。
スムーズに退店できる
店舗賃貸の大きなメリットの一つが、退店時のスムーズさです。賃貸契約期間満了後の退店手続きは比較的簡単で、期間内に物件を明渡し原状回復を行えば借主の責任は終了します。
一方、土地や建物を購入した場合、売却するまでに時間を要します。売却できずに長期的に金銭的な負担が残ることもあるでしょう。特に立地条件が悪い場合は、資産の転売が難しくなります。
このように、賃貸店舗は事業の見直しや移転を検討する際の自由度が高く、メリットが大きいです。
賃貸物件で店舗を始めるデメリット
メリットがある一方で、デメリットも存在します。賃貸物件で店舗を始める際は、さまざまなデメリットを踏まえ、慎重に検討しましょう。
● 賃料が継続的に発生する
● 改装の制限がある
● 借り手に不利な契約内容もある
それぞれのデメリットについても詳しくご紹介します。
賃料が継続的に発生する
店舗を賃貸物件で開業する大きなデメリットは、賃料が継続的に発生することです。一般的な賃貸借契約では、月々の賃料の支払いが義務付けられています。
賃料のほかにも、共益費やゴミ処理費用、清掃費用などの付帯費用が発生する場合もあるでしょう。このように、賃貸物件を借りるとさまざまな継続的な支出が発生します。店舗の売上が伸び悩んだ場合、固定的な支出である賃料などが重荷となる可能性があります。
賃貸物件の選定では、賃料相場を事前に確認し、事業計画に見合った賃料水準の物件を選ぶことが重要です。売上と経費のバランスを見極め、無理のない店舗運営を心がけましょう。
改装の制限がある
賃貸物件で店舗を始める場合、壁を壊すなど、建物の構造に手を加える大規模な工事は認められないことが多いです。具体的な改装の制限事項は物件によって異なりますが、一般的には壁の増設・解体、給排水設備の増設、天井や床の張り替えなどが禁止されています。
制限を無視して勝手に改装工事を行うと、原状回復を求められたり、最悪の場合は契約解除や損害賠償を求められたりする可能性があるため注意しましょう。
借り手に不利な契約内容もある
賃貸物件を店舗として借りる際には、借り手に不利な条件が含まれていることがあるため、契約内容を十分に確認しましょう。
以下のような契約内容には注意が必要です。
このように、借り手側に不利益となる契約内容がある場合は、交渉の余地があるかどうかを確認しましょう。わからない点は専門家に相談するのがベストです。契約前に不利な条件を見落とさないよう、十分な注意が必要となります。
賃貸×店舗のよくある質問
賃貸物件で店舗を始めようとお考えの方から寄せられる質問を集めました。
● 賃貸物件の一室でお店を開くことは可能?
● 個人事業主でも賃貸店舗を借りて開業できる?
● 住居用賃貸物件を法人登記したらバレる?
● 個人事業主の開業届に住所用賃貸物件を書いたらバレる?
● 賃貸の店舗物件に住むことは可能?
それぞれの疑問について確認していきましょう。
住居として借りている賃貸物件の一室でお店を開くことは可能?
マンションやアパートなど、住居として借りている賃貸物件の一室でお店を開くことは可能です。しかし、以下の点に注意が必要です。
● 賃貸契約や区分所有者の規約で、営業行為が制限されていないか確認する
● 事業の種類によっては、住宅地での営業が法的に制限される可能性がある
● 住宅は店舗設備が整っていないため、内装工事などの改装費用がかかる
● 駐車場や騒音対策など、近隣トラブルに十分配慮する必要がある
自宅での開業は可能ですが、以上のようにさまざまな制約があるため、開業前に十分な検討と準備が必要です。低リスクで始められる事業であれば、自宅での開業はコストを抑えられるメリットがあります。
個人事業主でも賃貸店舗を借りて開業できる?
個人事業主であっても、賃貸店舗を借りて開業することは可能です。ただし、契約時に個人と法人では扱いが異なる場合があるため注意しましょう。
個人事業主の場合、契約名義は個人名義となります。店舗営業可能か、貸主の許可を必ず取りましょう。また、個人事業主の開業手続きでは、開業届や税務署への申告が必要になります。
住居用賃貸物件を法人登記したらバレる?
法人登記の際には、本店所在地や従たる事務所の住所を記載する必要があります。
住居用賃貸物件を法人登記すると、大家に通知などがあるわけではありませんが、結論から言うとバレる可能性があります。法人登記すると、国税庁の法人番号公表サイトから会社の所在地は誰でも調べることが可能なためです。
住居用賃貸物件の賃貸借契約書に「居住用として利用」や「事務所用途は不可」などの文言が入っている場合は、法人登記すると賃貸借契約違反になるため避けてください。
個人事業主の開業届に住居用賃貸物件を書いたらバレる?
個人事業主として開業する際は、開業届を提出する必要があります。開業届には事業所の住所を記載しなければなりませんが、住居用物件の住所を書いても大家に知られることはありません。
ただし、以下の点に賃貸物件の住所を開業届に記載しても、家主や大家さんに通知されることはなく、個人情報保護の観点から、税務署から第三者に情報が漏れることはないためです。下記は注意が必要です。
● 法人登記の住所と異なる場合は、別途届出が必要
● 事業の実態がない住所では、実質的な事業所とみなされない可能性がある
つまり、住居用物件の住所を開業届に記載することは可能ですが、実際に事業を行う場所として適切かどうかが重要となります
賃貸の店舗物件に住むことは可能?
店舗と住居が別々の用途で建てられた賃貸物件は、通常は店舗部分に居住はできません。しかし、一棟貸しの物件であれば、一定の条件の下で店舗部分に居住が可能な場合があります。具体的には以下の通りです。
● 建物が住居用途としても認可されている
● 消防法や建築基準法上の居住に関する基準を満たしている
● 賃貸借契約書に「店舗兼住居」と明記されている
一部屋しか賃貸していない場合は、原則として店舗部分への居住は認められません。このような場合、事前に大家さんと十分に相談し、許可を得る必要があります。いずれの場合も、防火対策や近隣トラブル対策など、さまざまな観点から検討する必要があります。居住用途以外での利用には細心の注意を払いましょう。
テナント物件探しなら「テナリード」へ
賃貸物件で店舗を開業するメリットは、初期投資の抑制、立地の柔軟性、退店の自由度の高さなどがあります。一方で、賃料の継続的な発生や改装の制限、借り手に不利な契約条件などのデメリットもあるため、事前によく検討しなくてはなりません。
店舗開業には、立地、広さ・間取り、賃料・初期費用、権利関係、設備状況など、多くの要素を確認する必要があります。テナント物件専門サイトの活用や不動産仲介業者の活用、自ら物件を探すなど、効率的な物件探しをしましょう。
効率的な物件探しには、専門サイトを活用するのがおすすめです。その中でも「テナリード」は、店舗や事務所などのテナント物件をお探しの方と不動産会社をマッチングし、最適な物件をご提案いたします。店舗賃貸を探す際には、豊富な物件情報をもったプロの不動産会社に相談するのが一番です。しかし、最適な不動産屋探しは非常に時間がかかります。
賃貸で店舗を始めたいとお考えの方は、ぜひテナリードをご活用ください。あなたにぴったりな不動産会社と賃貸物件をご紹介いたします。