コロナ禍からペットブームが続く中、トリミングサロンの料金は5年間で約14%上がっているなど、需要は年々高まっています。特に都市部では、犬や猫を家族の一員として大切にする飼い主が増えており、シャンプーやカットなどのサービスに加えて、健康管理やペットホテルを併設するサロンも登場しています。そのため、独立や起業の選択肢としてトリミングサロンを開業したいと考える方が増えています。
しかし、開業には資格や保健所などへの届け出、費用の準備など多くのステップが必要です。さらに、競合が多い中で長く経営を続けるためには、差別化や集客の工夫も欠かせません。
本記事では、トリミングサロンを開業するために必要な基本情報から資格・許可、費用目安、開業の流れ、成功のポイントまでをわかりやすく整理しました。これから開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
トリミングサロン開業の基本情報
トリミングサロンは、ペットの美容や衛生管理を担うサービスとして年々需要が高まっています。シャンプーやカットといった見た目のケアだけでなく、皮膚トラブルの予防や健康チェックの役割もあり、ペットを「家族」として扱う飼い主から強く求められている分野です。特に近年は、ペット関連市場全体の拡大やペットの高齢化を背景に、サロンの形態やサービス内容も多様化してきています。
トリミングサロンの市場動向
近年のトリミングサロン市場は、ペット需要の高まりと共に大きく拡大しています。新型コロナウイルス感染症の拡大によって在宅時間が増えたことから、新たにペットを飼い始める人が急増しました。
一般社団法人ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、2022年の犬の新規飼育頭数は42.6万頭と過去10年間で最多を記録しています。さらに約9割の飼い主が室内飼育をしており、ペット可の賃貸物件も増加するなど、ペットを取り巻く環境は整備されつつあります。
飼育犬種では「トイ・プードル」が15年連続で1位を獲得し、全体の約2割を占めています。トイ・プードルは人の髪の毛と同じように被毛が伸び続けるため、定期的なトリミングが不可欠です。この影響から、トリミングサロンの利用率も年々高まっており、現在では犬の飼い主の約6割がサロンを利用しているとの調査結果もあります。
料金面でもトリミングの需要増加が反映されており、総務省「小売物価統計調査」によればペット美容院代は2019年の平均6,131円から2024年には6,989円へと上昇しました。人間のヘアカット代(男性3,706円、女性3,744円/2024年)より高額となっている点は注目すべきポイントです。飼い主が自身よりも愛犬の美容を優先する傾向が強まっていることがうかがえます。
参考:ペットビジネスに関する調査を実施(2025年)| 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
参考:全国犬猫飼育実態調査 | 一般社団法人ペットフード協会
参考:小売物価統計調査
トリミングサロン開業のメリット
トリミングサロン開業には、以下のようなメリットがあります。
・安定した需要がある
・リピーターを獲得しやすい
・サービスの多様化で差別化しやすい
・成長市場で新規参入の余地がある
トリミングサロンはペットを「家族」として扱う飼い主の増加に支えられ、継続的な需要が期待できる業態です。
特にトイ・プードルなど定期的なケアが欠かせない犬種の存在から、リピート利用につながりやすく、安定した収益を見込みやすい点が大きな魅力です。
さらに、シニア犬対応や訪問型サービスなど、多様化するニーズに応じてサービスを工夫することで、競合との差別化もしやすいでしょう。
拡大するペット市場の中でも、独立・起業を目指す方にとってチャンスの大きい分野といえます。
トリミングサロン開業に必要な資格

トリミングサロンを開業する際には、犬や猫などの動物を扱うために「動物取扱業」として自治体に登録する必要があります。
その際、事業所ごとに必ず配置しなければならないのが動物取扱責任者です。責任者は、動物の健康や安全を守り、法律や自治体のルールに沿って運営する役割を担います。
動物取扱責任者になるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・獣医師や愛玩動物看護師などの国家資格を保有している
・指定の専門学校や養成施設で1年以上の教育を受けている
・ペット関連業務で1年以上の実務経験がある
・その他、自治体が同等と認める資格や経験を持っている
さらに、自治体が実施する動物取扱責任者研修を定期的に受講することも義務付けられています。
なお、トリマー資格自体は必須ではありません。しかし、飼い主から信頼を得るためには、民間のトリマー資格や実務経験を持っていることが大きな強みになります。資格があることで技術力や知識を客観的に証明でき、集客やリピーター獲得にもつながるでしょう。
トリミングサロン開業に必要な届出・許可
トリミングサロンは、動物を扱う事業であるため、開業前に必ず以下のような法的手続きと許可申請が必要です。
まず最も重要なのが、「第一種動物取扱業の登録」です。動物愛護法に基づき、トリミング業は第一種動物取扱業(保管)に該当します。事業開始前に都道府県の担当部署へ申請し、施設の基準や管理体制などについて審査を受ける必要があります。
この登録を行うためには、上記でお伝えした「動物取扱責任者」の配置が義務付けられています。
また、動物取扱業の登録とは別に、「保健所への営業許可申請」や「消防署への届出」「開業届(税務署)」なども必要となるため、開業前に一つひとつ確認し、計画的に準備を進めましょう。
トリミングサロン開業に必要な費用目安
トリミングサロンの開業には、店舗を構えるための初期投資と、運営を継続するためのランニングコストが必要です。ここでは、大まかな費用目安と、資金調達の方法について解説します。
初期費用
トリミングサロン開業における初期費用はおおよそ80万円~300万円ほどです。
以下は、その内訳と金額目安です。

初期費用は、どのような設備を整えるかや店舗の規模によって大きく変動します。特にこだわりの内装や高性能な機器を導入する場合は費用がかさむため、あらかじめ予算を明確にしておくことが大切です。
運転費用
トリミングサロンを開業した後は、家賃や光熱費、消耗品費、人件費など、毎月継続的に発生する「運転費用(ランニングコスト)」が必要です。
具体的には、40万円~60万円ほどの運転費用がかかります。
内訳と金額目安は以下の通りです。

運転費用は月ごとに発生するため、最低でも3ヶ月分(約120万円〜180万円)程度の資金を確保しておくと安心です。開業当初は集客に時間がかかる場合もあるため、黒字化までの期間を見越して余裕を持った資金計画を立てましょう。
資金調達の方法
トリミングサロン開業に必要な資金を準備するための方法には、以下のようなものがあります。
・日本政策金融公庫など公的融資制度の利用
・自治体が実施する補助金・助成金の活用
・信用金庫や地方銀行からの融資
・家族・知人からの借入
・クラウドファンディングによる資金調達
これらを組み合わせることで、自己資金だけでは不足する開業資金を効率的にまかなうことが可能です。
公的融資は無担保・無保証で利用できる場合があり、開業時によく選ばれます。自治体の補助金・助成金は返済不要のため、条件が合えば積極的に活用したいところです。また、信用金庫や家族・知人からの支援、クラウドファンディングも補助的な手段として有効です。
開業時に利用できる助成金などは、以下の記事で詳しく解説しています。
「開業時におすすめの補助金・助成金制度11選。申請時の注意点も解説」
トリミングサロン開業の流れ

トリミングサロンを開業するには、アイデアだけでなく計画的な準備が欠かせません。コンセプトづくりから物件探し、資金調達、開業手続き、集客までを段階的に進めることで、スムーズに事業をスタートできます。以下では、開業までの主な流れを整理しました。
コンセプトを決定する
まずは「どんなサロンにするのか」というコンセプトを明確にします。高級志向でワンランク上のサービスを提供するのか、リーズナブルで利用しやすい価格帯にするのか、シニア犬や小型犬に特化するのかなど、方向性によってサービス内容・料金設定・内装デザインが変わってきます。コンセプトが決まるとターゲット層も絞り込みやすくなり、集客やブランディングの基盤となります。
開業場所を選定する
トリミングサロンの出店先を決める際は、ターゲットとするエリアのニーズや競合状況を把握することが重要です。ペットと暮らす世帯の多い住宅地や、動物病院・ペットショップが点在する地域などは、安定した需要が見込める候補地となります。また、集客方法やサービス内容との相性も考慮しながら、無理のない家賃で運営できるエリアを選定しましょう。
立地と物件選びについて詳しくは、以下の見出し「立地と物件選びも重要」で紹介しています。
事業計画書を作成する
開業に必要な費用や収支シミュレーション、ターゲット層、サービス内容、差別化ポイントをまとめた事業計画書を作成します。これは融資審査を受ける際にも必要であり、自分自身の経営指針としても役立ちます。事業計画がしっかりしていれば、資金調達や人材確保もスムーズになります。
資金調達を行う
自己資金に加え、日本政策金融公庫の新創業融資制度や信用金庫・地方銀行の融資、自治体の補助金などを組み合わせて資金を準備します。初期費用だけでなく、開業後の運転資金を3〜6ヶ月分程度確保しておくことが安定経営のポイントです。
設備・備品の購入をする
トリミング台、シンク、ドライヤー、バリカン、シャンプーなどの必須備品を揃えます。清潔感と安全性を確保するために、耐久性や機能性を重視して選びましょう。併せて待合スペースや受付、ペットがリラックスできる内装環境も整えることが大切です。
開業の手続きをする
保健所への届け出、動物取扱業の登録、消防設備の整備、税務署への開業届提出など、必要な手続きを進めます。特に「第一種動物取扱業」の登録は必須で、講習会の受講や設備基準を満たしていなければ認可されません。事前にスケジュールを確認して余裕を持って準備することが大切です。
集客を行う
開業と同時に集客をスタートさせるために、WebサイトやSNS、予約サイトへの掲載を準備しておきましょう。オープニングキャンペーンや割引特典を設けると新規顧客を呼び込みやすくなります。さらに、口コミや紹介制度を活用することでリピーターを増やし、長期的な顧客基盤を築けます。
特に、トリミングサロンで集客を行う場合はWeb集客に注力するとよいでしょう。
具体的には、以下の「Web集客に注力する」の見出しで紹介いたします。
トリミングサロン開業を成功させるポイント
トリミングサロンは需要が高い一方、競合も増えているため「開業すること」自体はゴールではありません。長く安定した経営を続けるためには、サービスや環境、集客方法に工夫を凝らすことが欠かせません。ここでは、開業を成功させるための具体的なポイントを整理します。
他店との差別化を行う
トリミングサロンの数は年々増加しており、他店と同じサービスを提供しているだけでは埋もれてしまいます。小型犬専門や高齢犬対応、オーガニックシャンプーの導入、カットスタイルの提案力など、自店ならではの強みを打ち出すことが大切です。差別化によってターゲット層に刺さるメッセージを届けられれば、リピーター獲得にもつながります。
ペットのにおいや騒音対策も重要
トリミングサロンでは、多くの犬や猫を同時に受け入れるため、どうしてもペット特有のにおいや鳴き声が発生します。特に湿気のある環境では体臭がこもりやすく、来店した飼い主に不快な印象を与えることもあります。こまめな清掃や消臭機器の導入、換気を徹底することで清潔感のある空間を保ちましょう。
また、犬の鳴き声や猫の鳴き声は近隣トラブルにつながる恐れがあります。防音対策を施したり、待機スペースを仕切って落ち着ける環境をつくったりすることで、ペット自身のストレス軽減にもつながります。においと騒音は「サロンの印象」を左右する要素であるため、快適に過ごせる環境づくりを心がけることが大切です。
ペットの安全性を確保する
トリミング中はハサミやバリカンを使用するため、常に事故のリスクが伴います。器具の管理や衛生面を徹底し、ペットがストレスを感じにくい環境を整えることが重要です。また、持病や年齢に応じた対応ができるよう、スタッフ全員がペットの健康知識を持っておくと飼い主からの信頼も高まります。
Web集客に注力する
サロン探しの主流はインターネットです。ホームページやSNSを活用し、施術例やキャンペーン情報を定期的に発信しましょう。Googleビジネスプロフィールに登録して口コミを集めることで、新規顧客の獲得につながります。InstagramやTikTokでトリミング動画を発信すれば、自然な形でブランディングも可能です。
立地と物件選びも重要
トリミングサロンは「通いやすさ」がリピーター獲得に直結します。住宅地の近くや動物病院・ペットショップの近隣は安定した集客が期待できますが、家賃とのバランスを見極める必要があります。さらに、清潔感のある外観や開放的な店内は「安心して預けられるサロン」としての印象を高める要素になります。
理想の立地や条件に合う物件を効率よく見つけるには、専門サービスを活用するのもおすすめです。
まとめ
トリミングサロンの開業には、資格取得や行政への届け出、初期費用や運転資金の準備といった基本的なステップが欠かせません。さらに、コンセプトづくりや立地選び、集客戦略など、経営を軌道に乗せるための工夫も必要です。
市場はペット需要の高まりを背景に拡大を続けており、定期的に利用されるリピート性の高さから、安定した経営が期待できる分野といえます。一方で、ペット特有のにおいや鳴き声への対応、ペットの安全管理、競合との差別化といった課題もあるため、事前に対策を講じておくことが成功へのカギとなります。
トリミングサロン開業を検討している方は、必要な情報を整理したうえで、物件選びや資金調達を計画的に進めましょう。安心して通える環境を整え、ペットと飼い主の双方に寄り添ったサービスを提供できれば、長く愛されるサロンをつくることができます。
トリミングサロン開業に最適な事業用物件を探すなら「テナリード」へ。希望条件を登録するだけで、不動産業者から非公開物件の提案が届きます。効率的に理想の物件を見つけたい方はぜひご活用ください。

